《神託/夢占い》
(TRPGに対する意見)
最新更新日:2007年3月7日(水)
他の人と色々な討論をしていて気がついたのですが、ほとんどの人がGURPSの
ルールを正確には把握していません。例えば、
銃弾によるダメージは使われる弾丸の種類と口径によってダメージ型がい
ろいろと変わる(ベーシック完訳版、267ページを参照してください。)ので
すが、ほとんどの人が銃弾のダメージ型は「叩」しかないと考えています。
確かに、ベーシック完訳版、265〜267ページの銃器リストには、レーザ
ーなどの一部の例外を除いて、銃器のダメージ型は「叩」であると書いて
ありますが、これはケブラーなどのダメージ型によって防護点の変わる防
具に対して、どの防護点を適用するかを考えるときのみに使うものであり、
防護点を抜けたあとのダメージをそのまま適用する、という意味はないの
です。(そのため、英語版のGURPSのほとんどは、銃器のデータにダメ
ージ型をつけずに、ダメージの欄で「−」や「+」、「++」といった記号を使
うことで防護点を抜けたあとのダメージ修正を表現しています。ちなみに、
Steve Jackson Games のROLEPLAYERのQ&Aによれば、ほとんどの
弾丸のダメージ型が「叩」となっているのは、「弾丸の弾頭は鋭いというよ
りもむしろ丸く、撃ったあとはマッシュルームのような形につぶれるから」だ
そうです。)
無生物の防護点やヒットポイント(ベーシック完訳版、162〜163ページを
参照してください。)は、「その素材そのものが持つ標準的な防護点やヒット
ポイント」を表すべきものなのですが、ほとんどの人がこれを「その素材で
できたものが持つ防護点やヒットポイント」であると誤解しています。(その
ため、百鬼夜翔の妖怪は装甲車でも簡単に破壊できる、という妄想が生ま
れるのです。)この反証として最もわかりやすいものは「てんとう虫」の別名
を持つスバル360でしょう。スバル360の外壁に使われているのは、厚さ
3mmの鉄板です。これはそのままではぐにゃぐにゃとたわんでしまいます
(ベーシック完訳版、163ページのデータでは防護点3です。)が、あの「て
んとう虫」に独特な丸みを鉄板にもたせると、自動車の外壁に使っても問題
のないほどの強度(ベーシック完訳版、177ページのデータでは防護点5で
す。)が生まれます。同様のことは鎧に対しても言えます。TL4になると、鎧
の鋼板に「シノギ」といわれる折り目をつけて鎧の防御力を上げる技術が開
発されるのです。(それ以後も、防御力を高めるための技術は次々と開発
されていきます。)そのため、COMPENDIUM IIによれば、TL4以上の技
術で「ヘビーコースレット」を作ると、防護点をTL4で11、TL7で44、TL8で
56、TL9で68にまで上げることができる上、TL7での普通の挿入型防具で
は、50点の防護点が追加できることになっています。
日本のナイフである匕首(ひしゅ)は、ベーシックにあるダガーとは基本的な
データは同じであるものの、全く違う武器です。Steve Jackson Games のDr.
Kromm氏が「最も信頼できる」としているJAPAN SECOND EDITIONに
は、“Hishi”(匕首)は価格を倍にするだけで髪飾りに偽装して身に着けるこ
とができ、その「準備」の行動には1ターンしかかからない、と明記されていま
す。(武器の偽装や変形のルール(パワーアップ、245〜246ページを参照
してください。)を考えれば、“Hishi”がいかに優れた性能を持っているかが
わかるでしょう。)また、COMPENDIUM IIによれば“Hishi”のTLは3とな
りますが、HIGH−TECHによればTL4の技術では(TL3以下の)手持ち武
器や鎧の価格は8割になり、(TL4の武器や鎧の場合は、「その装備が初め
て登場したTLでの価格」という「価格」の定義により、価格は変わりません。)
SWASHBUCKLERSによれば、TL4の最末期からTL5の最初期(われわ
れの世界の歴史でいうならば西暦1700年ごろ)(以降)の技術では上質の
武器が通常品質の武器と同じ価格に、通常品質の武器が安物の武器と同
じ価格になるので、“Hishi”はベーシックにあるダガー(TL3以下)よりも価格
が安く、より上質なものになります。
(注:JAPANでの一般的な<武具屋>は、最低でもTL4の最高レベルです。)
といったことが挙げられます。このような間違いは、単にルールを読み落とすことだ
けでなく、GURPSのルールを現実とは関係ない「ただのルール」とみなすことで起き
るものと考えられます。GURPSのルールは、基本的に現実の世界を簡潔な言葉で
映し出したものです。そのため、GURPSのルールを考えるときには、現実の世界の
事象も考えに入れる必要があるのです。(しかし、残念なことに、現在(2003年6月)
のグループSNEのQ&Aは、この考えからは程遠いところにあります…。)
いろいろなところで紹介されているGURPSのキャラクターを見ていて気がついた
のですが、ほとんどの人がキャラクターの特徴と、それによって技能に加わるボ
ーナスを正確には把握していません。非常に典型的な例としては、ルナル世界で
<御者/牛>技能を取得するときに、エルファならば「動物共感」と氏族ボーナスで
+5、下半身が牛のギャビットならば、「牛にのみはたらく動物共感」で+4のボー
ナスがあることや、「感情察知」(「テレパシーレベル3」)を持っていると<言いくる
め>技能に+1のボーナスがあることを、(私が聞いてみた限りでは)ほとんどの人
が意識していない、ということが挙げられます。この場合は、ルールブックを読み
込めばちゃんとルールブックのどこかには書いてあるので、1回気付けば(基本的
に)問題はなくなります。しかし、それ以外にも、ルールブックには明記されていな
いものの現実の問題としてボーナスがかかる技能はたくさんあります。
例を挙げると、
「時間感覚」―「今が何時か」と「過去のある時点から何時間たっているか」
の両方が秒単位で直感的にわかる(上に、この感覚は時差によって狂うこと
はない)ので、現在位置が「ある時点」でいた場所から経度にしてどれくらい
ずれているかが簡単にわかります。(「計算力」を持っていれば完璧です。)
そのため、<航法/TL4〜5>技能に+2以上のボーナスが加わります。
(TL6〜7では、「今が何時か」を十分な精度で知ることができる時計が船内
にあるのが標準になるためにボーナスは減り、TL8以上では、ナビゲーショ
ンシステムを利用することによって直接緯度、経度を知ることができるように
なるために、TL3以下では航海をするときに「時差」という概念を使わないた
めにボーナスはありません。このボーナスは、SWASHBUCKLERSないし
HIGH−TECHに、「今が何時か」を知るために非常に正確な時計(1日あた
りの誤差が3秒以内)を使えば<航法>技能に+1のボーナスがある、という
記述があることから計算しています。)
「毒無効」―薬品を「危険を冒さずに味見する」ことができるため、<医師>技
能に+3のボーナスがつきます。
「一意専心」―技能を使うときに数分以上かかる技能(<診断>と<催眠術>以
外の医学系技能は全て含まれます。)のほとんど全てに+3のボーナスがつ
きます。(「のめりこむ(癖)*」とあわせると+4です!問題は、技能を使って
いる間は知覚判定に合計で−6もの修正が課されることですが。(「放心」や
<瞑想>技能の使用による修正を加えると、知覚判定の目標値が2以下にな
ることはざらです。))
のようになります。(他にもまだまだあるかもしれません。)そのため、GURPSのキ
ャラクターを作成するときには、キャラクターが取得した特徴が何を意味しているの
か、どんな影響をキャラクターにもたらすのかを、現実的にしっかりと把握しておく必
要があるのです。
以前Tetsuさんから「
《歴史》(改革履歴)
に「更新」と書いてあるのに、どこも更
新されたようには思えない。」という質問を受けました。(訳あってこの質問の回
答を
《遅発伝言》(質問およびその返答)
に載せることはできません。)
この質問に答えます。
《歴史》(改革履歴)
で私は、「更新」はちょっとした表記の更新点や訂正(たとえ
1字の変更でもあれば載せます。)、「誤りを訂正」は記事の中に見つかった致命
的な誤りの訂正、「追加」は新しい記事の1項目分の追加、「大幅に追加」は新し
い記事の複数追加(これは
《古代史》(大雑把な改革履歴)
にも載ります。)とい
うように、更新情報の書き方を統一しています。それでわかると思いますが、私
のサイトの更新のほとんどは、実はちょっとした訂正です。ぱっと見てどこを更新
したのかがわからないというのも無理がありません。私は、1度書いた記事でも
改めるべき箇所があれば、どんどん「更新」させていきます。はっきりとした更新
点を確認したいときには、
《古代史》(大雑把な改革履歴)
の方をみてください。
しかし、他のほとんどのサイトでは、1回書いた記事は大抵ほったらかしになり、
誤字、脱字なども訂正されることは無いようです。(少なくとも、私がインターネット
上で確認した限りでは。)これは問題ではないでしょうか。TRPGに限らず、全て
のものは時々刻々と変わっていきます。そのため、本来はサイトに載せた記事は
管理者の責任においてその都度訂正され続けるべきものなのです。(すでに記
述してしまったものでも簡単に変更が利くのがコンピュータ(ホームページ)の特
徴ですから、訂正は簡単に行えるはずです。)
百鬼夜翔に対する意見をいろいろと読んでいて気がついたのですが、大抵の人が
妖力や妖術を取得するときに、特に限定もせずに「妖怪のイメージに沿った」取得
をしているようです。(
下の記事
も参照してください。)しかし、それは宝の持ち腐れ
(CPの無駄遣い)というものです。例えば、イメージ上「(限定無しの)飛行」と「(限定
無しの)水中行動」の両方がほしい妖怪がいるとします。この妖怪は、単純計算で
は合計で40+10=50CPを払わなければなりません。しかし、「(限定無しの)飛
行」には、英語版のGURPSによると、「空中での飛行速度の半分の速度(つまり、
普通は移動力そのままの速度)で水中を自在に移動する」能力が含まれています。
(個人的には、ミズナギドリなどの例を考えてもわかるように、「翼での飛行」でもこの
能力は使えるものと思います。)この能力は「水中行動」の能力とかなり重なるので、
「水中行動」に「水中での移動力が<水泳>技能の1割となる(−50〜−75%)」、
ないし「飛行」に「空を飛ぶときだけ使える(−30%)」の限定をかけても使える能力
には何ら代わりがありませんが、必要なCPは確実に減ります。(減少率から考えて、
大抵の場合は「飛行」の方を限定したほう(合計38CP)がいいでしょう。)このように、
それぞれの妖力や妖術には色々な使い道があります。しかし、「この妖力(妖術)は
このように使う」というイメージがしっかりとあるならば、それ以外の使い方はしない
(できない)ようにその妖力(妖術)に限定をかけるべきです。そうすれば、CPをより
効率的に使うことができるうえ、他の人にも的確にそのイメージを伝えることができ
るからです。(実は、
《神託/ルーン占い》(寸評)
の「
百鬼夜翔に関係するもの
」
にある「・
限定の達人たれ。
」は、このことに関する主張です。)
百鬼夜翔に対する意見をいろいろと読んでいて気がついたのですが、大抵の人が
いわゆる「二重限定」、つまりある妖力(例えば、「高速飛行」)の前提となっている
妖力(例でいうならば「飛行」)に発動できる状況を制限する限定をかけたときに、
その妖力(「高速飛行」)に対して前提となる妖力(「飛行」)と同じ限定をかけること、
はやってもやらなくても能力的には変化がない(が、必要なCPだけは変化する)と
思っているようです。これは間違いです。ある妖力(例えば、「高速飛行」)の前提と
なっている妖力(「昼間にしか使えない」「飛行」)が限定で使えなくなった(夜になっ
た)としても、他の妖怪から「他人に影響」する前提の妖力(「他人に影響」する「飛
行」)を付与してもらえば、その妖力(「高速飛行」)は「二重限定」をしていない限り
使うことができるようになるからです。
ルナルをやっていると、しばしば矛盾する点に出くわすのですが、ほとんどのルナル
のGMやプレイヤーは、大抵その場その場で「てきとうに」処理して済ませることが
多いようです。しかし、その矛盾点があまりにひどすぎると、ゲームとして成り立た
なくなります。その一例が<姿なきグルグドゥ>(海洋種)です。彼らは、基本的に深海
(海底都市)に暮らしていて、陸上でも移動力(と「よけ」)が半分になるだけで普通
に行動できるのですが、彼らの種族の基本セットには、深海で暮らすために欠かせ
ない「耐圧」も、転ばなくなる「特殊移動」も、(彼らは体全体で光を感知するという設
定になっているので、)「背面視覚」も「広視界」も入っていないのです。ここまで特徴
が足りないと、CPを使ってキャラクターの総合能力を調整するGURPSとしてはプレ
イできないという事態が生じてしまいます。このようなことを防ぐためには、新しい異
種族のデータを作る際に、「CPを払ったりもらったりしていない部分は原則的に人間
である」とみなして、基本セットに入っている特徴の一つ一つを人間に当てはめ、変
化させていくことでその異種族になるかどうかを確認するしかありません。少なくとも
GURPSにおいては、新しい異種族のデータは慎重に作られなければならないので
す。
最近、ルナル関係のチャットや掲示板、グループSNEのQ&Aを巡っていて判った
のですが、相当に多くの人がギャビットはPCとして使えないと感じているようです。
私もこのことには同感です。なぜギャビットは使い勝手が悪いのでしょうか?一番
大きい理由は、体力の割に全身鎧が重く、高過ぎることでしょう。グループSNEの
Q&Aには、COMPENDIUM IIのデータとして馬鎧のデータが(革製で受動防御
2、防護点2、重量15kg、価格$380。チェインメイルで受動防御3、防護点4(刺
しには受動防御1、防護点2)、重量35kg、価格$600。板金鎧で受動防御4、防
護点6、重量45kg、価格$1400。)載っています。このデータから、現行のルー
ルでのギャビット用の全身鎧は馬鎧よりも重く、高いことが判ります。(上記のデー
タから、鎧というものは体が大きくなってもそれに比例して重く、高くなるとはいえな
いものの、ギャビットの大きさは馬の大きさ(3へクス)と人間の大きさ(1へクス)の
中間ですから、本来ならば鎧の重さや価格は人間の鎧と馬鎧の中間の値になる
でしょう。)しかも、馬の体力は約30〜60、ギャビットの体力は普通11〜15なの
で、体力にかかる鎧の重量の割合はギャビットのほうがはるかに大きくなります。
(ここで、ギャビットは背中の上にあるものの重量を半分として荷重に加える、という
ルールがありますが、グループSNEのQ&Aによると、このルールは自分が着てい
る鎧には適用されないそうです。)これだけの不利な修正を受けながら、現行のル
ールではギャビットはこのことを不利な特徴として扱っていないのです!ギャビット
は、この設定が「間違って」いるわけです。このことからも判るように、PCとして使う
のに魅力的な異種族を新しく設定するときには、その世界の一般的な常識をよく考
えるべきなのです。
(注:この記事で紹介されている馬鎧のデータは、LOW−TECHで確認したところ、
TL2のものとみなして問題ないため、(板金鎧は、青銅製であることになっています。
青銅ならば、大きな板金もTL2の技術で作れるのです。(さりげなくハーフプレート
のTLが2〜4となっているのはそのためです。)ただし、鋼の鎧に比べて、青銅の鎧
の重量は約1割増しになり、防護点は1点減少します。(そのため、TL2の「ハーフ
プレート」(防護点5)はTL3の「ライトプレート」にも匹敵するほどにごついものにな
ります。))一般的なTLが2であるギャビットにもそのまま適用できます。)
以前から気になっていたのですが、(ルナル世界も含めて)日本でのオリジナルの
GURPSの世界では、「義務感/種族」のCPが基本的に−10CPとなっています。
(例外は「義務感/人間」の−15CPです。)これは、少なくともルナルのような世界
では間違っているとしか考えられません。なぜなら、「義務感/人間」を持っていた
としても、ドワーフなどの異種族は義務感の対象にならないからです。「義務感/
種族」が−10CPとすると、同じだけのCPをもらえる「義務感/個人的な知り合い」
と同じ程度の制限しかかけるべきではありません。しかし、少なくとも一般的なルナル
世界では、それぞれの種族の登場頻度は個人的な知り合いの登場頻度よりもはるか
に多く、人間の登場頻度と大して変わりません。つまり、「義務感/種族」のCPは
−10CPではなく、−15CPであるべきです。なお、「義務感/種族」の基本的な
CPは、英語版では−10CPとなっていますが、これは欧米のファンタジーで一般的
に認識される人間以外の種族は非常に少ないため、個人的な知り合いと同じくらい
の頻度でしか出会うことはないと判断したためと考えられます。
色々な所で紹介されている、日本語でのGURPSの展開を見ていて気がついたの
ですが、ほとんどの日本でのオリジナルのGURPSのルールやデータは、英語版の
GURPSのルールを全く考慮していません。例えば、英語版のGURPSでは「全く
二日酔いをしない」という特徴は5CPの有利な特徴ですが、百鬼夜翔、46ページで
紹介されている「うわばみ」の特徴は、同じCPではるかに有用な「酒によるペナル
ティーを一切受けない」能力を獲得できます。これはゆゆしい問題です。このような
事態を防ぐには、オリジナルのGURPSのルールを作る人が、既存のルールの体系
と、新しいルールとの整合性がきちんと取れていることを確認してからルールを公表
するしかありません。(もし、そのときに
<ガープス!>
技能があれば、助けになる
でしょう。)なお、少なくとも私は、GURPSの新しいルールやデータを作るときに、
そのようなことを(時には実際のゲームバランス以上に!)常に考慮するように心
がけています。
日本でのオリジナルのGURPSのデータを見ていると、オリジナルの武器にはほぼ
間違いなくそれ専用の技能が設定されており、汎用のGURPSで紹介されている
技能では使用できないようになっています。これは、グループSNEの友野詳(敬称
略)がルナル(ないしドラゴンマーク)でやっていることを他の日本のGURPSファン
がまねしていることで生じているものと考えられますが、これはGURPSの「本来の」
あり方とは逆行しています。GURPSは、もともといろいろな世界の物事から、その
本質を簡潔に抜き出すことで、煩雑なルールの少ない汎用TRPGを目指したもの
です。(だからこそ、ムエタイと空手の技能に同じ<空手>が当てられたり、太極剣を
<フェンシング>技能で扱えるようになっていたりするのです。)それにもかかわらず
オリジナルの武器ごとに新しく技能を設定するのは、ゲームに煩雑さをもたらすだけ
です。ルナルのオリジナルの武器の技能の中には、汎用のGURPSに載っている
武器技能の技能なし値になるものもかなりありますが、そのようにするなら、むしろ
その武器は一般のGURPSの武器技能で扱えるものの、他の武器との間には【慣
れ】の問題が生じる(ベーシック完訳版、65ページ(サイドバー)、ないしマーシャル
アーツ完訳版、28ページ(<フェンシング>技能の解説)に書かれたルールを用いま
す。)ことにしたほうが、はるかにルールの整合性が取れます。その代表例が、グ
ループSNEのホームページに載っているガープス・ルナル・シナリオの「白狼魔女
伝」の追加武器データとして紹介されている「三つ又槍」です。これは、パワーアップ
で紹介されている「トライデント」と、使う技能(「三つ又槍」は<三つ又槍>(肉体/並、
技能なし値:<槍>−3)、「トライデント」は<槍>)以外のデータがまったく同じなのです。
いろいろなところで紹介されているGURPSのキャラクターを見ていて気がついた
のですが、<地域知識>を習得させる際に、ほとんどの人が町、ないしそれよりも
広い範囲で専門化させています。現代の背景世界ならともかく、中世/ファンタジ
ーの世界では、これは能力の無駄遣いとしか言いようがありません。特にルナル
のバドッカで、「/右奥歯地区」や「/左目地区」と専門化しているのは言語道断
です。というのも、<地域知識>で最高の精度を持つ専門化は「/1マイル四方の
地域」で、これは面積的に1.8km四方、ないし半径1kmの円と等しいのです。
(単位系の換算に関する
下の記事
も参照してください。)そして、その精度でいろ
いろな町を網羅するのにいくつの<地域知識>が必要かを挙げていくと、
現実世界
ノイブライザッハ(古代の典型的な囲郭都市)―1個未満
平城京(710〜740年、745〜784年)―9個
長岡京(784〜794年)―7個
平安京(794年〜)―9個
長安(人口100万人、8世紀)―25個
上京竜泉府(渤海の都、8世紀)―11個
バグダード(アッバース朝、人口150万人、8〜10世紀)―50個以下
アーヘン(フランク王国首都、8〜16世紀)―1個未満
ストラスブール(神聖ローマ帝国、1200年)―1個未満
ストラスブール(神聖ローマ帝国、1390年)―2個
ストラスブール(フランス王国、1681年)―3個
コンスタンティノープル(ビザンツ帝国首都、人口50万人、4〜15世紀)―2個
リューベック(ドイツの中心的都市、12〜15世紀)―1個未満
高田(江戸時代の代表的な城下町(現上越市))―2個
上・下東旭川兵村(北海道の屯田兵村、19世紀)―4個
ルナル世界
(注:これらの町は、リプレイや小説などで、正確に規模がわかっています。)
<滝の街>キーンブルグ―1個未満
<中空都市>ムルマイル(人口1万人)―50個未満
<垂直都市>ピール(人口5000人以上)―4個
<回転都市>エサレーグ(人口1万人)―1個未満
<鬼面都市>バドッカ(人口3万人)―3個
<交わりの街>ターデン(人口5000人)―1個未満
ナング(人口100人ほどの、典型的なドワーフの鉱山村)―1個未満
ラジスの森―約7万個
となります。これらから、一般的な中世/ファンタジーの世界の都市は、地域別
に専門化したほうがはるかに詳しい情報が得られるといえるのです。
百鬼夜翔(ルールブック)を読んでいると、「TL8.5」という非常に奇妙な概念に
出くわします。どうもTL8の技術でありながら、未だに百鬼夜翔(ないしわれわれ)
の世界には登場していない技術、ないしその産物を指しているらしいのですが、
(わからない人のために書いておくと、われわれの世界及び百鬼夜翔の世界は、
現在TL8ということになっています。)その概念を表すには「TL8」があれば十分
です。そもそも、ある文明レベルでの技術が、その文明レベルで全て享受できる
のはその文明レベルの最末期だけです。例えば、TL5における銃器を見てみる
と、初期の燧石銃から雷汞銃、ピンファイア、リムファイア、センターファイアと続く
着火方式の変化、そしてシングルアクションからダブルアクションのリボルバーの
開発、とすさまじい発展を遂げています。つまり、同じ「TL5」でも、背景世界一つ
で、内容ががらりと変わってしまうわけです。文明レベルというものは、このような
性格を持っているために、「TL8.5」という概念は非常に不適切なものであると
言えるのです。(そのような概念を表すには、「百鬼夜翔(ないしわれわれ)の世
界は、TL8の(ごく)初期である」と言えば十分です。)
ルナル世界では、眼鏡のレンズの微妙な度の調節ができないために、眼鏡を使
っても「近視/遠視」のペナルティーは完全にはなくならないことになっています。
しかし、これは非常に眉唾物です。ルナルには、初期のものとはいえ望遠鏡すら
存在します。われわれの世界で最初に作られたとされるガリレオ式の望遠鏡は、
対物レンズ(凸)によって集められた光を、接眼レンズ(凹)によって正確に補正
することで拡大像を得るものです。(そのため、接眼レンズと対物レンズの距離
は固定されています。われわれが普通目にする、鏡筒と接眼筒を動かすことで
接眼レンズと対物レンズの距離を調節できる望遠鏡は、少しあとになって発明
されたケプラー式の望遠鏡です。)これは、複数のレンズの焦点距離を正確に
把握した上で、それらのレンズを互いに特定の距離をおいて正確に取り付ける
ことで初めて機能するものです。(これがいかに高度な技術であるかは、ガリレオ
式望遠鏡を、ガリレオと同じように自作しようとすればわかるでしょう…私も実際
に自作したことはありませんが。)つまり、ルナルには理論だった光学の知識は
ないとしても、凸レンズや凹レンズの焦点を、かなりの精確さで定められるだけ
のレンズ加工の技術があるわけです。(ちなみに、加工は凸レンズよりも凹レン
ズのほうがはるかに難しいそうです。)それほどの技術があれば、眼鏡の焦点を
(近視用の凹レンズだろうが、遠視用の凸レンズだろうが)正確にあわせること
は問題なくできるはずです。もし、眼鏡の度の調整がうまくいかないとするならば、
それは「眼鏡の鼻当て」が発明されていないため、目と眼鏡を適切な距離だけ
離すことができないためと考えたほうが自然です。(ちなみに、われわれの世界
では、「眼鏡の鼻当て」は江戸時代に日本で発明されたものとされています。)
ルナルに限らず、GURPSでファンタジーをやるときに、サービスとして「パワース
トーンを定額、霊薬を半額」でPCに与えるGMがいますが、(この場合の「定価」
は、マジックに書かれている標準価格を指しています。)よくよく考えてみると、これ
は非常に奇妙なことです。マジックにも書いてあるように、パワーストーンの標準価
格は実際の作成費用にリスク分の上乗せをした(魔化の成功率の逆数をかけた)
ものの約2倍もします。(それだけ「ぼったくって」いるわけです。このことについて、
もっと詳しく知りたい人は、
新しい魔法の応用その3
の
パワーストーンの価格
を
参照してください。)しかし、霊薬の方はそのような「ぼったくり」を標準価格に入れ
ていません。(魔法があまり一般的でない世界で霊薬の値段が跳ね上がるのは、
錬金術師の賃金が倍になって、人件費がかさむようになるからです。)霊薬の価
格を劇的に下げるには、マナが「濃密」な場所で霊薬作りを行う(制作期間が半分
になります。)必要がありますが、材料費は変わらず、失敗したときのリスクが大き
くなるために、霊薬の価格が半額になることは考えられません。つまり、「パワース
トーンを定額、霊薬を半額」で売るのは、霊薬で大赤字を覚悟しておきながら、パ
ワーストーンで思いきり「ぼったくる」という相矛盾した行動なのです。もし、「利益を
ほとんど取らない、良心的な店」ならば、「パワーストーンを半額、霊薬を定額」で
商売をするでしょう。(それでゲームのバランスが取れるかどうかは、また別の話
です。)
ルナル世界で、私が最も不適切であると感じていることの一つは、1ムーナ(リァン)
≒100円という金銭の感覚です。なぜ、一軒家が最低10万ムーナ、魔法の鑑定に
最低1000ムーナ(ピールでの価格です。)もかかるのでしょうか?ルナルでは、基本
的に中世/ファンタジー世界の物価を用いています。そのため、普通の職人が稼ぐ
日銭は、10〜20ムーナといったところです。大工は職人の中でもかなりの高給取り
ですから、大工の日銭を20ムーナとしましょう。10人の大工が自分たちの家を買おう
として、稼いだ金をまったく使わずに貯めたとしても、家を買うためには500日分の
労働が最低でも必要になります。最低ランクの家ならば、地価は無視できるほど安い
ところでしょうし、500人日の労働もあれば建つような代物でしょう。つまり、家の材料
費が最低でも9万ムーナはすることになります。しかし、安くて狭い平屋の家を建てる
のに必要な安い材木や石に9万ムーナもかかるならば、中世/ファンタジー世界の
物価の体系は成り立たなくなります。つまり、一軒家の最低価格が10万ムーナという
のは、明らかに高すぎるわけです。このようなことが起こった原因としては、「1ムーナ
は$1、だから100円」という安直な発想から、「一軒家は最低1000万円くらいから
あるから、一軒家の最低価格は10万ムーナ。」という考えが生じたことが挙げられ
ます。また、魔法の鑑定にも同じことが言えます。(ウィザードの日銭を25ムーナと
して計算してみてください。)この問題を解決するには、中世/ファンタジー世界の
「$1」は、実際には13世紀にイギリスで使われていた1ファージング銅貨と同じ価値
であり、ドルとはまったく関係がないものと考える必要があります。(実際に計算して
みると、1ファージング=1ムーナ≒1000円と考えるのが妥当です。)
英語版のGURPSと日本語版のGURPSの一番の違いは、ヤード・ポンド法を
用いているかメートル法を用いているかの違いですが、もともとGURPSはヤード
・ポンド法でうまくいくように作られたシステムなので、画一的にメートル法に変換
しようとすると、どうしても無理が出たり、処理が煩雑になったりします。例えば、
ベーシック完訳版についている、立ち幅跳びで判定なしに跳び越えられる距離の
計算で、1へクス=1ヤード=1m、1フィート=30cm(これはGURPSの単位系
の換算における基本です。)、1ヤード=3フィート(これは自明です。)として計算
すると、答えは(体力÷3−1)へクスと、実に簡単に出てきます。他にもいろいろ
な例がありますが、Steve Jackson Games がGURPSを、ヤード・ポンド法による
大胆な近似によって、リアリティがありながら処理が簡単なゲームに仕上げたと
いう、その考えは心に留めておく価値があるでしょう。そのため、GURPSをやる
際には、ヤード・ポンド法に気をつける必要があります。GRIMOIREはともかく、
その他の英語版GURPSの記述には、ほとんどの単位がどの単位であるかが
書かれていません。(GRIMOIREには、メートル法換算の計算方法が明記され
ています。)そのため、次のように解釈をやり直してもよいでしょう。
容積―4l=4クォート=1ガロンの水は8.3lbs.≒4kgで統一されて
いるため、基本的にはアメリカの容積を用いていると考えられますが、
ベーシックの水袋は、イギリスの単位を用いているとも考えられます。
その場合、水袋の容積はほぼ1.2倍になります。
距離―1マイル=1.5kmということになっていますが、実際は
1マイル=1760ヤード=1760へクスですから、1マイル=1.8km
で計算したほうがいいでしょう。
重量―2lbs.=1kgと、1/4lbs.=0.1kgという2つの換算があります。
また、1t=2000lbs.と、1t=2200lbs.という2つのtの解釈があるので、
t表示には気をつけたほうがいいでしょう。
身長、体重―ベーシックでは、1フィート=12インチ=30cm、2lbs.=1kgで
計算していますが、1フィート=30.5cm、1/4lbs.=0.1kgで計算しないと、
キャラクターは背が低く太り気味になってしまいます。(身長180cmと183cm
では、人の見掛けは結構変わります。なお、正確には、1フィート=30.48cm
です。)
もちろん、遊ぶ人同士の合意がなければ、解釈は変えるべきではありません。
ルナル世界では、悪魔の設定が特殊であるために、《悪魔退散》の呪文は意味
がない、と考えている人が結構いるようですが、それは間違いです。ルナル世界
ほど《悪魔退散》の呪文が有効である世界はありません。というのも、《悪魔退散》
は、「他の次元からやってきたもの」を元の次元に送還する呪文であるので、呪文
の成功度とエネルギーが十分にあれば、どんなに強力な外法鬼や元素獣が召還
されても「元の次元」に戻してしまえるからです。
(この記事は、大橋賢一氏からいただいた意見を元に、表記を変更しました。)
人間、誰しも間違いをするものです。ずいぶん前のグループSNEのQ&Aに
私が送った質問の中に、「矢筒など、1/2lbs.の品物が0.5kgと訳されて
いる」という一節がありましたが、(この質問は一応解答がついて、リーダーズ
サーカス内のガープスQ&Aのコーナーのバックナンバー(2000年7月)に
載っています。)この「矢筒」は「サンダル、スリッパ」の誤りです。「矢筒」は、
1つ1/2lbs.で、1つ0.2kgと、正しく訳されています。「サンダル、スリッパ」
は、1足1/2lbs.ですが、間違って1足0.5kgと訳されています。私の質問
を読んで混乱してしまった方、申し訳ありませんでした。
(注:英語版のGURPSの(1足1/2lbs.の)「サンダル、スリッパ」は、日本
語版のGURPSの(1足0.5kgの)「サンダル、スリッパ」とは価格が違う(前
者$24、後者$10)ため、それぞれは別の装備であるという考え方も成立
します。)
《神託/ルーン占い》(寸評)
の
記事
でも書きましたが、ルナルのTLは3(4+)
であることに気がついていない人が多いのには驚かされます。一般的にはTL3
の技術しか持ち合わせていないものの、TL4以上の技術の産物を見ても驚か
ない、というのがTL3(4+)の意味ですから、これは当然のことなのですが、ル
ナルで知られている技術のうち、TL4以上の技術がどれだけあるのかがわかれ
ば、この意見に反対している人も賛成に回るでしょう。
<多足のもの>―TL3(8)
影タマット―TL4+
フェンシング武器―TL4(例外は、太極剣のTL3だけです。)
熱気球―TL4(ベーシック)ないし5(HIGH−TECH)
かご柄―TL4
マンゴーシュ―TL4
ホイールロックピストル―TL4の後期
マスケット銃―(普通)TL4
カトラス(ルナルのリプレイで、海賊たちが使っていました。)―TL4
空気ポンプ(スタンボールを参照してください。)―TL4+
火打ち石式拳銃(ルナル・コンパニオンズの「<光る額>のバノン」氏を参
照してください。)―TL5
(注:「火打ち石式拳銃」自体はTL4(末期)の技術で作ることができます
が、ルナル・コンパニオンズで紹介されている「火打ち石式拳銃」は、そ
のデータからTL5の技術で作られたものと推測できます。)
翼人の<生態学/TL6+>
火縄銃、火縄短銃―TL4
<鍛冶屋>、<冶金>―TL6+(千ムーナ硬貨の原料となるプラチナを加工
するために求められます。もし魔法を使って加工するにしても、<鍛冶屋>
がTL5はないと、鍛冶屋の炉の温度にまでしか温度を上げられない《加
熱》ではプラチナを熔かすことすらできません。)
医学系技能、<化学>、<航法>、<物理学>、<天文学>―これらの技能は、
TL3の発想が改まるだけでTL4になります。(
下の記事
も参照してくだ
さい。)
そこで、TL4以上の技術をPCが文句なく取得できる方法を考えると、
「特殊な背景」を取ります。影術を使えることとTL4の技術を習得できる
という2つの利点が得られる影タマットの必要CPが10点ですから、それ
以下のCPでTL4の技術が得られるはずです。
<フェンシング>、<スタンボール>、<黒色火薬銃>、<マンゴーシュ>を技能
なし値にして、そこから<武具屋>を、その<武具屋>から<冶金>を習得
すると、それぞれのTLは4になります。
<操縦/熱気球>を習得します。その場合のTLは、最低でも4(ベーシッ
ク)ないし5(HIGH−TECH)となります。
<多足のもの>(のハーフ)のPCを使い、「発明家」の特徴を取ります。
影タマットのPCを使います。
翼人のPCを使えば、<生態学/TL6+>が習得できます。
<武具屋/TL4>が16レベル以上あれば、<銃器/空気銃/TL4>を取
得し、自作の空気銃で攻撃することができます。TL4の空気銃のデータ
は、ホイールロックの銃とほぼ同じ(再装填にかかる時間はずっと短くな
りますが。)ですが、価格は同じ性能のホイールロックの銃の10倍以上
するため、ゲームバランスが崩れることはありません。(なお、<銃器>は
誰にでも解放された技能です。)
医学系技能、<化学>、<航法>、<物理学>、<天文学>―これらの技能は、
普通のセッションで行われている内容がTL4になります。
と、実に様々な抜け道があります。それでもルナルのTLは3であると言い張る
のは、実におかしなことではないでしょうか?
GURPS Web Ring Japan の他のサイトをいろいろと見ていて気がついたのですが、
一般的には、GURPSと言えばルナルか百鬼夜翔を指しているようです。(その2つ
のいづれもメインとして扱っていない GURPS Web Ring Japan のサイトは非常に少
ないのです。)しかも、百鬼夜翔はともかくとして、ルナルのシステムに疑問を感じて
いるサイトがまったくと言っていいほどないのです。なぜでしょうか?
ルナルのシステムの基本には、「PCの能力を制限する」という発想があります。(疑
問に思う人は、この視点から、ルールブックを隅から隅まで読んでください。)これは、
一般的なTL3の世界の思想を再現するものとしてはまっとうなものですが、この思
考方法で日本のコンベンション等に臨むと、まず間違いなく嫌がられます。(この答
えがこうであるのは、昔の人が書いたこの書物にこのように書いてあるからで、こう
でなければならないものである。だからこのように信じろ。お前がその考えに疑問を
持つならば、お前は破門だ。それでも自分の考えを枉げないならば、絞首台が待っ
ているぞ。)だからルナルでは、思想は近代初期のレベルにまで進んでいて、それが
一般に広まっていることになっているのでしょうが、その時代の思想は一般的な一致
がほとんどない上に、<天文学>等の一部の技能はその思想の違いだけでTLが4に
なります。(さらに、ルナルには望遠鏡が存在するため、<天文学>はTL4であること
がほぼ確定します。)このことから、ルナルでセッションをやる時には、論争が絶えな
くなります。(少なくとも、私の周囲ではそうです。)つまり、ルナルでセッションをやる
場合は、その基本にある「PCの能力を制限する」という発想をなくさない限り、(そし
て、その発想がなくなった時点でルナルはルナルでなくなります。)楽しく遊べない人
間を出してしまいうるのです。
最近、グループSNEのQ&Aを読んでいて思うのですが、なぜほとんどの人がグルー
プSNEに瑣末な質問(少なくとも私にはそう思えます。)しかしないのでしょうか?グル
ープSNEがそうでない意見を無視しているのでしょうか?(私が質問した数と、答えが
返ってきた数の間にはあきらかに開きがあるため、そのようなことも十分に考えられま
す。)しかし、たとえそうであっても、質問をするのをやめたら、事態はまったく進展しな
くなります。少なくとも現在(2003年)、グループSNEにおけるGURPSの展開には、
矛盾があふれています。たとえば、現在ルナルで正式採用されている「格闘動作を技
能なし値で使うことはできない」というルールを厳密に扱うならば、<格闘>や<空手>(ア
ルリアナ信者やジャング・エルファが使うもの)を持っていても、普通に相手を蹴ること
はできず、ジャング・エルファの<柔道>は、腕関節技と、ささやかな近接戦闘のボーナ
スを与えるだけのものとなってしまいます。(柔道で基本になっているはずの、捌き、投
げ飛ばし、受身を行うことができません。)…実は、この問題は私が指摘して、ましに
なったほうなのです。(以前は、ルナル世界では誰も受身を取ることができませんでし
た。)グループSNEは、そのような事態をまったく理解していないように思われます。で
すから、私たち一人一人が、日本語版GURPSにある矛盾点を積極的に指摘するべ
きなのです。(瑣末な質問をするな、ということではありません。事実私もよくやっていま
す。)
(注:2003年11月のグループSNEのQ&Aによると、ここで問題となっている「格闘
動作」は「『ルナル完全版』に掲載されてる「信仰などで学べる、特殊な戦闘オプショ
ン」」のことを指すものだそうです。その場合、<格闘>や<空手>の問題は解決しても、
<柔道>の問題は解決しません。(ただし、ルナル世界での<柔道>は、原則的に受身
を行わない(という仕様である)、という好意的な解釈も一応は成立します。))
ドラゴンマークのガンマンドクターが持っている「射撃の達人」の特徴、45CP
は高すぎると思ったことはありませんか?あの特徴、実はドラゴンマークでは
本当に使えなくなっています。というのも、グループSNEのQ&Aによるとドラ
ゴンマークのガンマンドクターは、両手にピストルを持っていながら、1秒(=1
ターン)に愛用品のピストルから発射できる弾丸は何をやっても1発を超えな
いからです。
もともと、「射撃の達人」は、TL5の、シングルアクションのリボルバー(普通は
弾丸を1秒に1発しか撃つことができません。)が一般的に使われていた時代
に、<片手連射*>技能や<両手連射*>技能(どちらも英語版GURPSの未訳
の技能です。)を用いて、1秒に弾丸を2発、3発と撃つ時自動的に受ける抜
撃ちのペナルティーをなくし、さらに1ターン狙いをつけたのと同じ効果が得ら
れる、という点で45CPの価値があるのです。
まあ、ドラゴンマークでは仕方がないので、ガンマンドクターをやる場合には、
「遮蔽物から飛び出して銃を発射し、また遮蔽物に隠れる」(普通なら自動的
に抜撃ちのペナルティを受けます。)という戦闘行動をうまく使うしかないでしょ
う。
以前、手投げ斧の必要体力が、普通に使うときよりも投げるときのほうが小
さいのはなぜか、という質問がグループSNEのQ&Aにありましたが、これは
Steve Jackson Games のROLEPLAYERのQ&Aに回答が出ています。そ
れによると、答えは「斧を普通に使うときは斧を構えなおす必要があるが、投
げるときには構えなおす必要がないから」ということです。ここで思うのですが、
斧というものは、力任せに振り下ろすものであるため、安全のために<斧>技
能は「振り下ろした斧が目標にあたらなかったときにも自分の足を切らない
ように斧を止める技術」を含んでいるのではないでしょうか?勢いがついた斧
を止めるのはかなりの力が要るわけですから、必然的に必要体力が大きく
なるわけです。これが正しい解釈の仕方ではないでしょうか。
以前のグループSNEのQ&Aに、《物質障壁》の呪文の障壁上にものがあ
ったらどうなるか、という質問がありましたが、これはSteve Jackson Games
のFAQに回答が出ています。それによると、答えは「1D6を振って、3以下
が出ると無理やりに障壁の外に弾き飛ばされ、4以上が出ると無理やりに
障壁の中に引きずり込まれる。」ということです。ということは、先のグループ
SNEのQ&Aにあった「敵を1へクスの大きさの《物質障壁》で閉じ込める」
という戦法は、(1へクスの大きさの《物質障壁》の高さは1へクス(1ヤード
ないし1メートル)であるため)全くの賭けなのです。(そしてGMは、当然の
ようにクローズダイスを振るわけです。)もし敵を完全に閉じ込めたければ、
最低でも直径5へクスの《物質障壁》を作る必要があり、18点以上ものエネ
ルギーを使います。また、Steve Jackson Games のFAQによると、《物質障
壁》の呪文の解説において「魔法の物質」と呼ばれているものは、マナがな
いと存在できない精霊や悪魔などに限られます。(エリクサについては言及
されていませんが、個人的には「魔法の物質」に入ると思います。)つまり、
グループSNEのQ&Aにあった「敵を《物質障壁》の中に閉じ込めてから、
マジックアイテムでたこ殴りにする」という戦法は、そもそも不可能なわけで
す。ちなみに、《物質障壁》は、基本的に地面か大きな乗り物に「くっつけて」
半球形のドームを地上(乗り物の上)に出すようにしか作れません。(Steve
Jackson Games のFAQおよびROLEPLAYERによると。)また、そのときに
囲まれた土などが、他と切り離されることもありません。(下半分の障壁を掘
り出すと、その時点で切り離されますが。)そのため、《物質障壁》は、飛んで
いたり泳いでいたりする相手にはほとんど役に立ちません。まあ、乗り物の
配線を横切るように障壁を作って情報のやり取りを遮断することでその乗り
物を止めたり、狭いダンジョンの通路を完全に塞いだり、(障壁は(Steve Ja
ckson Games のFAQによれば)中のものにかかる重力等で動くので)破壊で
きないデスローラーにしたりと、《物質障壁》の応用はいろいろとあるのですが。
ルナルの【射撃受け】(カルシファードのもの)の格闘動作、凶悪だと思ったこと
はありませんか?なんと言っても技能無し値が(<刀>技能の3分の2)−1で、
(<刀>技能の3分の2)までレベルが上げられ、その判定と意志判定に成功する
だけで刀で射撃呪文が「受け」られるのですから。日本語版のGURPSだけしか
知らない人にはぴんとこないかもしれませんが、これはとてもバランスを崩して
いる格闘動作なのです。これを説明するのは、少々手間取ります。
コクーンの《瞬間矢よけ》の呪文を知っていますか?実はあの呪文、GRIMOI
REにも載っているのですが、その呪文の魔化の項には、(<射撃受け>技能の
2分の1)−5の判定で、武器で射撃呪文を「受け」られるようにする、というのが
あるのです。(より詳しい情報は、
こちら
を参照してください。)これは意志判定
は必要ないものの、格闘動作としてレベルを上げることはできません。問題とな
るのは、その魔化にエネルギーが2000点も必要となる、ということです。魔化
にエネルギーが2000点かかる魔化といえば、代表的なものは常動型で知力が
1点上昇する《知恵》や、常動型で敏捷力が1点上昇する《すばやさ》です。これら
の能力よりも有利な能力を、カルシファードの武戦士は、(現行のルールでは)
平然と使ってきているわけです。
銃弾の嵐を全部平然と「よけ」ることは実際上(できる人には)簡単ですし、
リアリティもあるものです。というのも、銃弾を「よけ」るという行動は、「移動
をする振りをして射手に撃っている銃の弾道をそらさせる」ということを意味
しているからです。
他の人と話していると、ほとんどの人が<フォースソード>技能はTL11に
なってから登場する、と思っていることがわかります。これは誤解です。T
L0でも<フォースソード>技能は存在しえます。なぜなら、超能力の[精神
剣]や、ソニックブレード(こちらはTL10になります。)は、<フォースソード>
技能で使うものだからです。
これはGURPSに限ったことではないのですが、TRPGのデータを見て
いると、リアリティとゲームバランスを考えたときに、往々にしてゲームバ
ランスだけをとっているような気がします。(まあ、それでもゲームバラン
スがとれていないTRPGも結構あるのですが。)
例えば、GURPSでは刀と木刀(木剣)の重さが各2.5kg(5lbs.)、竹
刀の重さが1.5kg(3lbs.)となっています。しかし、実際の重さは、木
刀が約0.5kg、竹刀は剣道のルールで定められていて、400〜500g
です。(実際にはつばの分少し重くなります。)刀は実際に量ったことは
ありませんが、(鞘を含めたとしても)木刀の5倍の重さなどということは
ないでしょう。(そこまで重さが違うと、扱い方が変わらざるを得ないので、
竹刀や木刀では刀の練習にならなくなります。)
これは、「刀は片手でも両手でも使える剣である」「つまり、刀はバスター
ドソードのようなものである」「ということは、重さもバスタードソードと似た
ようなものである」(バスタードソードの重さが5lbs.というのはかなりいい
線です。)「ついでに、刀の練習に使う木剣や竹刀も重さは似たようなもの
である」という推測から出てきたものであると思われます。
確かに、ゲームのバランスをとるのも大切かもしれませんが、TRPGとい
うのは、ある世界をPCやGMの心の中に再現するためにするもののはず
ですから、その世界の「リアリティ」を再現できないというのは、バランスが
どうこうという話よりも大きな問題ではないでしょうか?
(この問題について、Steve Jackson Games のDr. Kromm 氏から見解を
いただきました。それによると、問題となっている木剣(木刀)のデータは、
日本で一般的に認識されている「木刀」ではなく、大きくて重い、木を削って
作られた剣の模型(刀の形をしているとは限りません!)を無理やりに<刀>
技能で使ったときのものなのだそうです。この見解により、「木剣」の重さ
の問題は解決されましたが、その他の問題についてはまだ解決されていま
せん。)
最大致傷は「その武器を使ったときにあけることができる傷の大きさには限界
がある」ことをあらわすものとなっていますが、それを再現するには、【大きな
ダメージ:”貫通”】(ベーシック完訳版、146ページ)のルールがあれば十分で
あって、ダガー(1本のが重量1/4lbs.、最大致傷が1D)がTL3のヘビープ
レート(防護点7)を最大致傷のために貫けないのに、ライフルの弾丸(1発の
重量が0.1lbs.、与えるダメージは5Dから7D)がTL3のヘビープレートをい
とも簡単に貫いてしまうということはゲーム的にも現実的にも不自然ではない
でしょうか?ここで思うのですが、最大致傷は「その武器が耐えられる衝撃の
大きさ」によって決まるものとするべきです。つまり、弱い武器は攻撃するとき
に武器を壊さないように「手加減する必要がある」ために最大致傷が存在する
のです。当然、この考えでいけば、武器の品質がよくなれば最大致傷は上がっ
たりなくなったりします。
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