《神託/夢占い》
(TRPGに対する意見)
最新更新日:2007年3月7日(水)
それだけで遊べるGURPS第4版の導入用ルールブックとしては、ユエ
ルはそれなりに評価できる作品です。(あくまでそれまでのルナル等と比
べての話で、評価できる理由も「余計なことをほとんど書いていないから」
なのですが。)
しかし、ユエルには致命的な欠陥があります。GURPS第3版のルール
があちこちに混ざっているのも致命的な欠陥なのですが、それだけでは
ありません。GURPS第4版では、衝突のダメージは(HP×速度÷100)
Dで表されるため、ヒットポイントだけが異様に高いユエルのボスキャラ
(特に<悪魔>)に対する最高の攻撃手段が「落下ダメージを与える」こと
に、ボスキャラの最高の攻撃方法が「開けたところで水平に体当たりを
仕掛ける」ことになってしまうのです。(例えば、ギゴンドス(HP150、移
動力16(飛行))は体当たりで(150×16÷100)=24Dの叩きダメー
ジを与えます。)
このような問題が発生したのは、ユエルのルールを作る際に本来のGU
RPS第4版の「哲学」を見ていないためと考えられます。そもそもGURPS
が第4版でヒットポイントが体力基準なのは「大きな生き物はより多くのダ
メージを受けることができ、力も強い」という発想から出てきたものです。
そのため、ヒットポイントは体の大きさ(体力)と密接な関係があるとみな
されているのです。そうではない世界の場合、その「ヒットポイント」は「防
護点」に「ダメージを受けるとはがれ、はがれた防護点はヒットポイントと
同じように回復する(−80%)」という限定をかけたものとして表さなけれ
ばなりません。(これは第4版BASIC SET CHARACTERSにも書い
てあります。)
このように、GURPS(特に第4版)で特定の世界を再現しようとする際
には、背後に隠れている「哲学」も考えてルールを設定する必要があるの
です。
最近、ウィッチクエストを紐解いていて気がついたのですが、技能の分
化という点においては、GURPSとウィッチクエストは正反対の路線を歩
んでいます。
ウィッチクエストでは、(基本的に)魔女が取得できるスキルは非常に少
ないので、例えば「走る」スキル1つで通常のランニングから馬の扱い(乗
馬)、下手をすると馬車の御者や自動車の運転まで全てをカバーすること
になります。(猫の場合はさらに単純で、肉体的な能力は全て「強さ」、そ
れ以外の能力は全て「美しさ」でチャレンジします。)
それに対し、GURPSでは様々な状況に応じ多種多様な技能(GURPS
第4版では、通常の技能だけで250種類以上)が存在し、それらのほとん
どが複雑な技能なし値の関係で結ばれています。
ここで思うのですが、ウィッチクエストのようにスキルを大まかに分けるに
してもGURPSのように技能を細分化するにしても、自分のPCが「実際に
何ができるか」を完璧に把握することは易しいことではありません。(ウィッ
チクエストの猫程度にまで能力を簡略化すればそうでもないかもしれませ
んが、それだけでは大抵のセッションは面白くなくなるでしょう。)そうだか
らこそ、TRPGに参加する場合には、少なくとも自分が扱うキャラクターの
データ、そしてそのキャラクターが「何ができて何ができないのか」をしっか
りと把握しておくべきなのです。(行われるTRPGに慣れていない場合は、
それは非常に難しいことかもしれませんが。)
最近、他の人が作ったGURPSのハウスルールを見て回ったり、寄せら
れたGURPSの質問に答えたりしていて思ったのですが、ほとんどの日本
語版GURPSのユーザーはGURPSの中に貫かれている「哲学」に気が
ついていないようです。
そうでないならば、両手で武器を使うときにバックラーは手首に固定して
使えるというハウスルール(ソーサルナイツ・アカデミー(VR)では正規の
ルールになっていますが…)が採用される理由が私にはわかりません。
ベーシック【完訳版】、88ページでは<バックラー>は「腕に固定」しても使
えるという記述がありますが、攻撃を「止め」る際には盾を矢面に向けない
といけないので、手に持っているものは何であれ非準備状態になるはずで
す。また、単に受動防御が欲しいならば「かご柄」のルールを使うべきでし
ょう。(ちなみに、この辺のルールはGURPS第4版で「腕に固定して使い、
手に物を持つことができる(ただし、装備はできない)ものが盾、手で持た
なければならず、物を持つことができないものがバックラー」というように整
理されています。)
この問題は結局は「「バックラー」とは何か」というところに帰着するもので
すが、それ以外にもGURPSには「明記されているわけではないが、一貫し
た「哲学」に基づいているルールやデータ」が多数存在します。(GURPS第
3版では)「暗さによる視覚判定へのペナルティーは照度の指数関数に比
例している。」「古風な長射程武器の正確さは、普通に「狙い」をつけた際
の武器の見え方と密接に関係している。」「動物の知力は基本的にその動
物の分類と調教のしやすさで決まる。」、(GURPS第4版では)「体力は技
能の基準にならず、基本的に技能なし値にもならない。」「振って使う武器を
使わない限り、ダメージは「突き」が基準になる。」などがそのいい例でしょ
う。(これらはELIZAの私見であり、明確な根拠はありません。)
GURPSのルールについて考える際には、そのような「哲学」も考えていく
必要があるのです。(実際に遊ぶ際には、ルールの解釈が統一されていな
いのはトラブルの元なので、遊ぶ人同士でよく話し合い、どのような「哲学」
でルールを解釈するか、意見を統一するべきでしょう。)
2005年4月2日からグループSNEのサイトのデザインが一新されました。
(私は、ポップアップで更新情報を表示するやり方には問題があると思いま
すが、)デザインの変更自体は何ら問題のあるものではなく、一般の人が見
やすいサイトになればそれでいいのです。
しかし、その過程で行われたフォローの「切り捨て」は問題です。現在(20
05年4月)の時点で、グループSNEのサイトからは文庫版GURPSのエラ
ッタ、オリジナルの世界やリプレイ、基本ルールにソロシナリオ、これまでの
(ルールや設定に関する)Q&Aが全て失われています。(最後のQ&Aだけ
は纏め直されて復活する可能性がありますが、それ以外の記事の復活はま
ず考えられません。)
これでは、ゲーム上での問題を抱えた人に指針が示されず、ユーザーが
GURPSから離れていってしまいます。WEBスペースの容量の問題がある
のかもしれませんが、記事を単純なテキストファイルにして圧縮し、ダウンロ
ードできるようにすれば問題は解決します。これは記事をプリントアウトして
利用しようとする人にとっても便利でしょう。(プリントアウトの問題に関して
は、別にプリントアウト用のページを用意し、印刷の仕上がりを良くすると同
時に情報転送を分散させる、という解決策も存在します。)
先日、英語圏の人から「「性表現恐怖症*」でない女性は皆<花魁*>技
能を持つべきだ」とある(注:これは英語の記事の内容です。)が、純潔を失
うことを恐れない女性は全て娼婦なのか?」という質問メールを貰いました。
(書き方に問題があるので、これを
《遅発伝言》(質問およびその返答)
に
載せることはできません。)
この質問に答えます。
これは<花魁*>技能の内容の問題です。私の知る限り、英語版GURPS
(第3版)では「避妊法」をカバーする技能は<花魁*>技能しかありません。
(それ以外に英語版GURPS(第3版)で「避妊法」を扱う技能を知っている
人がいれば、教えてください。信頼できる情報源での確認が取れ次第問題
の記事を訂正します。)問題の記事は「性に対しての恐怖症を持っていない
女性は皆避妊法を知っているべきだ」と読んでください。
基本的に、私のサイトの記事はGURPSの中で注目すべき事項を洗い出
し、それを直接的、間接的に読者に伝えるために存在します。問題があり
直接伝えられない情報にも上記のように重要なものが含まれているので、
できるならば探し出してみてください。
《遅発伝言》(質問およびその返答)
での(私の記事に対する)質問や間違いの指摘は歓迎します。
(追記:上記の質問の回答は英語で質問者に返信しています。なお、GUR
PS第4版では上記の問題も含め、私が指摘していたほとんどの問題に(良
くも悪くも)解決策が出されています。(著作権、翻訳権上の問題から、ここ
では具体的な内容は書けません。))
最近、私の周囲で「(仲間内でやっている)TRPGにハウスルールを導入
するのはともかく、そのハウスルールが複雑かつ膨大で、しかも絶えず更
新され続けるのは勘弁願いたい」という意見を聞きました。この意見には
私も同感です。(私もこのTRPGのキャンペーンに参加していますが、ゲー
ムから退いていないキャラクターでも合計で3回ほど作り直しています。ま
た、10回以上キャラクターの作り直しを行っている人もいます。)ヤコブ・ニ
ールセン氏の言葉を借りれば、このTRPG(のハウスルール)には、「使い
やすさ」のうち「覚えやすさ」と「効率のよい操作性」が致命的に欠けている
のです。(さらに、そのハウスルールは全体で7MBを超えているので、「使
いやすさ」のうち「学習のしやすさ」も失われていると私は考えます。)
これは仲間内での話ですが、それと同様の過ちを犯しているのがユエル
・サーガです。というのも、現在(2004年11月)の時点で、ユエル・サーガ
のリプレイは使用するルールをGURPSの第3版から「徐々に」GURPSの
第4版に移行させていくことになっているからです。
下の記事
でも言っていることですが、GURPSの第3版とGURPSの第
4版では、基本的に「ものの捉えかた」が異なります。(だからこそ版が変わ
ったと考えることもできます。)そのため、ルールが改訂されるごとに(本来
は)キャラクターを一から作り直さなければなりません。(そうしないと、セッ
ションで「ものの捉えかた」をめぐって衝突が生じます。)
さらに、リプレイのどの部分がGURPSの第4版のルールを用いているか
が分からなく(ないし非常に分かりにくく)なるので、訳語の同一性を確認す
ることがほとんどできなくなります。(訳語の同一性に関しては、
下の記事
でその重要性を述べています。)これらにより、ユエル・サーガのリプレイ、
および(日本語の)第4版のGURPSの「使いやすさ」はほぼ完全に失われ
てしまうのです。
以上の理由から、TRPGでキャンペーンを行う際は、使用するルールの
変更をできる限り避け、どうしても必要な場合にはある時点で一気にルー
ルの改定(その際はキャラクターを全て作り直します。)を行うべきなので
す。(私が
GURPS シガン
の更新を
GURPS シガン
のPlay by BB
Sが始まってからほとんど行っていないのは、このような考えに基づいたも
のです。)
最近(2004年10月〜11月)思うのですが、ほとんどのGURPS関係の
サイトで記事の更新が滞り気味になっています。(私のサイトも例外ではあ
りません。)これは、主に日本語版でのGURPSの展開が停滞していること
によるものと考えられます。例えば、グループSNEのサイトのガープスQ&
Aは、現在(2004年11月3日)の時点で実に10ヶ月(2003年12月〜2
004年10月)もの間停止したままです。更新のネタがなければ記事の更
新ができないのは当たり前です。WEBを見る限り、この状況は他のTRP
Gにも言えるような印象を受けます。これは由々しき問題です。
TRPGのプレイヤーの多くは、遊ぶTRPGの最新の動向に反応します。
そして、その反応しあったプレイヤー同士が交流することでそれぞれの好
みに合ったTRPGの「遊び方」を作り上げていくのです。その助けになるよ
うに、全てのTRPGは常に独自の展開を広げ続けなければならないので
す。
(注:日本以外のTRPGの展開、およびFEAR社のゲームの展開について
はこの主張が成立しないことはあらかじめ言っておきます。)
他のサイトでTRPGに関する論説(コラム)を読んだり論争をしたりする中
で気がついたのですが、少なからぬ人がTRPGと戦闘は切っても切り離せ
ないものであると感じているようです。しかし、これは間違いです。(戦闘を
行わないTRPGのセッションがどのようなものになるのか見当も付かないと
いう人は、
《筆記》(プレイログ)
の
プレイログその1
を参照してください。)
この間違いが起こる原因としては、(日本での)TRPGの展開の問題が挙
げられます。現在(2004年10月6日)の時点で、(日本にある)TRPGの
ほとんどが「戦闘がよくある世界」を楽しむためのものであることは紛れも
ない事実です。(おそらくは、そのような「世界」に対する需要が大きいので
しょう。)しかし、ウィッチクエストなど、普通は戦闘を行わないTRPGもそれ
なりに存在します。TRPGと戦闘は切っても切り離せないものであると感じ
ている人の多くは、大多数の「戦闘がよくある世界」を楽しむためのTRPG
と、TRPGには必ず盛り込まれている戦闘のルールに惑わされているだけ
なのです。
TRPGは、ある「世界」を再現するものである以上、その「世界」で起こりう
るさまざまな事態に対処できなければなりません。そのため、(普通に生活
していても喧嘩に巻き込まれることは十分に考えられるでしょうから)形だけ
でも戦闘のルールは必ずTRPGに盛り込まれるものなのです。TRPGにお
いて、戦闘ルールを使う(ような状態になる)かどうかは、そのTRPGが扱う
「世界」の設定と遊ぶ人の考え方次第なのです。
最近、(GURPSでない)TRPGをやっていて気がついたのですが、「ある
TRPGの新しい版を手に入れたので、そのTRPGで、新しい版のルールを
旧い版のルールに導入して遊ぶ」ということが(少なくとも私の周囲では)よ
く行われているようです。TRPGは娯楽ですから、遊ぶ人全員が同意してそ
れを楽しんでいるならば問題はないのかもしれませんが、私はこれは基本
的に勧められることではないと考えています。
GURPSを例にとって考えてみましょう。(英語版の)GURPSでは、200
4年の8月中にGURPSの第4版が発売されることになっています。(現在
(2004年8月15日)の時点ではGURPS第4版はまだ発売されていませ
んが、先行公開された情報だけでもかなりの内容を知ることができます。)
GURPSの第4版と前の版である第3版とでは、まず能力値の設定や(現
実の)データへの置換方法が大きく異なります。そのため、特徴や技能の
価値(必要CP)や効果もそれに対応して変わり、それにより「有能な」キャ
ラクターのあり方が根本的に変化するのです。
これは、GURPSの版が改まるのに対し、GURPSの背後にある「ものの
捉えかた」が変化したということを表しています。(少なくとも私は、(先行公
開された情報から)一枚岩ではなかったGURPS第3版の背後にある「もの
の捉えかた」の1つが全面に押し出され、(日本語版GURPSで言うと)妖
魔夜行が百鬼夜翔になったのと同じ方向性をもって、GURPS第4版での
「ものの捉えかた」が統一された、と感じています。)
TRPGはある「世界」を皆で楽しむものです。そしてTRPGのルールはそ
の「世界」を扱う際に一致させておかなければならない「世界の捉えかた」
です。「世界の捉えかた」が違うルールを融合させる際には、それなりのリ
スクを負うことを覚悟しなければならないのです。
(注:GURPS第3版(日本語版)の
GURPS シガン
では、「旧いGURPS
のルール」を(一部)取り入れていますが、これはそれなりの「背景」と「思想」
の上に行っているもので、上記の意見と矛盾するものではないことは言って
おきます。)
グリモア【完訳版】を読んで思ったのですが、グループSNEは英語版のG
URPSの日本語への翻訳にかなり苦労したようです。(そういう私も、翻訳
をやれといわれたらすんなりとはいかないだろうことは目に見えているので
すが。)各種の用語(特に呪文名)の翻訳にそのことを色濃く感じます。(G
RIMOIREでも、呪文名の選定には苦労の跡が見られるのですが、グリモ
ア【完訳版】に見られる苦労の跡はその比ではありません。)
しかし、それは翻訳に際して訳語の「同一性」を崩す理由にはなりません。
残念なことに、グリモア【完訳版】では訳語の「同一性」が保たれていないの
です。例えば、マジック【完訳版】までは、<呪文射撃/球体>で発射できるの
は《石弾》と《氷球》でしたが、グリモア【完訳版】ではこれが何の宣言もなく
《火球》と《爆裂火球》、《酸球》と《爆裂衝球》に変更されています。この「す
りかわり」は、グリモア【完訳版】に先行してパワーアップで紹介された《爆裂
衝球》の説明文から、パワーアップの発表に際して起こったものと推測でき
ます。(パワーアップの発売当時、私はこれを誤訳だと思っていましたが、そ
うではないことが今回はっきりしました。)グリモア【完訳版】には、このような
「実際にゲームを行う上で記述が違うために問題が生じる」ような記述が(私
がざっと見ただけでも)更に5箇所はあります。(ここでは、《くすぐり》と《ゴー
ントのくすぐり》のような、宣言した上で記述を変更したようなものは考えてい
ません。これは、(日本語の)GURPSの完訳版が出る際に、「絞めつけ」と
「窒息」の戦闘行動で用語と実際の行動が入れ替わったように、以前から行
われていたことです。)
翻訳に際して、訳語をわかりやすく定めることはいいことです。しかし、GU
RPSはきちんとしたルールを持つゲームなのですから、最低限「どの訳語が
どの用語に対応しているのか」は確実に伝わるように翻訳されるべきです。
(その意味で、私は訳語の「実際とのイメージのずれ」や「二重定義」、「宣言
の上での変更」は全く気にしません。(そうでないと、いつかは訳語の混乱や
語彙の枯渇が起こってしまいます。))
久しぶりに初めての人同士でGURPSのセッションをやって気がついたの
ですが、(TRPGにおいて)どのようなことが「リアル」だと感じているかは人
によって大きく異なるようです。(これは
《遅発》させた《発声》(書き込み)
に
ある、2004年5月16日から2004年5月19日のやり取りでも(再)認識さ
せられました。)この原因には舞台となる世界背景についての認識の違いの
他にも、「GURPSの言葉」で表されたものが指しているものの認識の違い
が挙げられます。
例えば、
下の記事
で書いたように、私は「GURPSの刀(のデータ)は重
すぎる。なぜならばその重さでは(現実の)竹刀で訓練しても「刀」の練習に
ならないから。」という意見を持っています。しかし、単純に言葉の上からで
は「実際にGURPSのデータ並みの重量を持つ「刀」も存在する。」というよ
うな反論も成立しえます。ただし、これはGURPSにおける<刀>技能の特徴
(<フェンシング>技能と同様、1ターンに2回技能レベルの3分の2で「受け」
が行えるが、それを実現するためには(片手と両手という違いはあるものの)
<フェンシング>技能と同様の制限を守らなければならない)を完全に無視し
た反論です。すなわち、この<刀>技能の特徴から、GURPSでは(<刀>技能
で扱う)刀をフェンシング武器と同様に微妙な刃の動きが重要になる武器で
あるとみなしているはずだとわかるので、(<刀>技能で扱う)刀はフェンシン
グ武器と同様に軽く扱いやすい武器であると推測できるのです。(これに相
当する刀には「打刀」(0.7〜0.9kg)があります。また、GURPSのデータ
並みの重量を持つ「刀」は(刃の無い「兜割」も含め)実際には基本的に「力
任せに振り回して鈍器のように扱う」でしょうから、GURPSのデータとしては
(<両手剣>技能で扱う)「野太刀」(「兜割」の場合は「鉄棒」)として考えるべ
きでしょう。)
このようなことが起こる原因としては、「GURPSの言葉」で表されたものを
「言葉どおりに」受け取ってものを考えるということが考えられます。GURPS
はもともと英語圏(アメリカ)のゲームなので、その(ルールやデータの)作成
や翻訳においてどうしても「GURPSの言葉」と現実の間には言葉の「ずれ」
が生じます。そのため、GURPSをやる際には、「GURPSの言葉」は現実で
は何に相当するものであるかを(GURPSのルールなどの)記述を見比べて
確認しておく必要があるのです。
(注:SWASHBUCKLERSの追加(選択)ルールでは、(TL4以上では)刃
の付いた武器の重量を3分の1にまで減らすことができます。このルールを
採用する場合、上に書いた例の問題はなくなり、それに関する意見も成立し
なくなります。((「刀」のデータがある)JAPANでの一般的な<武具屋>は、最
低でもTL4の最高レベルです。))
日本語でのGURPSの展開を見ていて思うのですが、(特に最近の)グル
ープSNEのオリジナルのGURPSは「GURPSらしく」ありません。この原因
には(最近の)日本語版GURPSのリプレイにルール的な記述が少なく「超
法規的」な行動(この事については、富士見ドラゴンブック ルナル・サーガ
・リプレイ 月に至る子B 監修=安田 均 著者=友野 詳/グループS
NEを参照すればよくわかるでしょう。)が多いことも挙げられますが、それ
以上に大きいのは「グループSNEの」GURPSは本来の(英語版の)GUR
PSの精神とは違う方向に進んでいることによる影響です。
ここで、GURPSでの銃器を例にとって考えてみましょう。銃器は、(他のT
RPGと比べても)ただでさえ高いGURPSでの致死性をさらに高めるように
思われます。そのため、グループSNEのGURPSでは、ほとんどの場合銃
器は敬遠され、極端に無力化されています。(百鬼夜翔はともかくとして、ル
ナルでは極端な入手難度の高さ、ドラゴンマークではA.B.F.のために銃
器を使って活躍することがまずできません。)ルナルの場合は「銃器が主に
使われるような世界観にはしたくない」という思惑があり、銃器には入手しに
くい代わりに見返りがある(詳しくは、
こちら
を参照してください。)ためまだ
いいのですが、ドラゴンマークのA.B.F.の場合、銃器を使うバージョンは
(ディーヴァとの)戦闘ではほとんど役に立たなくなるという非常に大きな問
題を抱えています。これは「銃器が強いなら、致傷力を下げてしまえばいい」
という発想からきているものと考えられるので、(既存のルールでは)原理的
に問題を解決できません。
これに対し、英語版のGURPSでは、銃器に対して基本的に「銃器は強い。
それでも、それに対抗できるだけの防具は存在するはずだ。」ないし、「銃器
が防具を簡単に撃ちぬくほど強いなら、銃弾は人間の体も簡単に撃ちぬき、
人体そのものにはそれほどダメージが及ばないはずだ。」という発想に立っ
ています。それを(「現実」に沿い、かつゲームとして面白くなるように)実現さ
せるために、英語版のGURPSでは武器の致傷力と防具の防護点の関係、
防護点を抜けた後のダメージ修正、「大きなダメージ:“貫通”」(ベーシック完
訳版、146ページを参照してください。)などのルールが設定され、様々なテ
ストプレイを経て何回も改変され、現在(2004年)に至っています。(最近に
なっても、英語版ではGURPSの第4版を出版し、いくつか大きいルールの
改定を行うようです。)この精神で先のドラゴンマークの問題を考えると、「A.
B.F.の効果を「銃弾が“貫通”するのに必要なダメージが通常のX分の1に
なる」というように変更する」という解決法が比較的簡単に導かれます。これ
は完全なハウスルールですが、このルールによる問題は(少なくとも私には)
思いつきません。
ゲームの「面白さ」に関する感覚は英語圏の人と日本語圏の人とである程
度は異なるかもしれませんが、あるルールがゲームのバランスを崩すかどう
かは基本的に日本語であっても英語であっても(翻訳の間違いが無ければ)
変わらないはずです。そのため、日本語版GURPSでオリジナルのルールを
作るとしても、数多くのテストプレイを重ねている英語版GURPSの精神を(少
なくとも)参考にするべきなのです。
(注:百鬼夜翔のように、数多くの(テスト)プレイの意見を取り入れ、ルールを
独自のものに変えたものは、英語版のGURPSの精神とは異なっていても(少
なくとも日本においては)正しいGURPSの精神(の1つ)とするべきでしょう。)
グループSNEの日本語版GURPSのリプレイ(特にルナル)を読んでい
ると分かるのですが、かなりのPCが容貌を「魅力的」以上に(悪くても「標
準」に)設定しています。(ちなみに、
《戦士作成》(サンプルキャラクター)
を見れば分かるように、私がキャラクターの容貌にCPを割り振ることはほ
とんどありません。)百鬼夜翔の場合は、妖怪本来の姿により人間時の容
貌も(ある程度は)決定され、容貌による反応修正が対人間用と対妖怪用
でそれぞれ定まっている(世界観である)ため、特に問題はありません。し
かし、(ルナルなどの)他の世界では以下のような問題が存在します。
実際問題として、容貌が「美人」以上の人間(ないしその他の種族)
はそうそう存在しません。(「容貌/美人」は美男美女コンテストに出
場できるくらい、「容貌/超美人」は美男美女コンテストでほぼ確実
に優勝できるくらいの容貌です!)そのため、「美人」以上の容貌は
非常に目立ちます。ルナルのリプレイでは、プリシラ・クルツ(「容貌
/超美人」です。)がアンディ・クルツたちの陰で活動していましたが、
そのような人物が町にやってきた時点で、町の人の噂にならないわ
けがありません。よほどうまく自分の美貌を隠さない限り、(特にサリ
カ神殿やシャストア神殿では)聞きたくなくてもそこここで噂話を聞くこ
とになるでしょう。同様に、容貌が「平均的」でないPCが複数いるパ
ーティ(グループSNEのルナルのリプレイなどではよく見かけます。)
は、当然のように注目の的になります。そのため、そのパーティが街
中で隠密行動をとることは非常に困難になるでしょう。
ある種族の容貌の差は、基本的に異種族にはあまり分からないもの
です。「悪い容貌」の解説(ベーシック【完訳版】、20ページを参照し
てください。)には、「人種が違えば気づかない程度のもの」と記され
ていますが、この「人種」は(その他の文脈からして)本来は「種族」と
訳してもよいものです。(COMPENDIUM Iにある、「人種(race)」
の定義からこのように言えます。)しかし、ルナル世界では、「悪い容
貌」の人間はエルファからの反応にもペナルティーがつくことになって
います。(逆もまた然りです。)CPの効率から言えばそちらのほうが
よいのかも知れませんが、それでは「悪い容貌」はその本来の定義
から外れてしまいます。
このような問題が生じるのは、PCが「容貌」をあまりに重要視しすぎてい
るためと考えられます。「容貌」による反応修正は、決して絶対的なもので
はなく、種族や人種によって当然異なるべきものです。そして、PC作成の
際には、「容貌」は割を食う特徴であることを心に留めておくべきなのです。
(ただし、よい容貌のキャラクターは、イラストにしたときに見目がよく、商業
ベースに乗せやすいことは確かでしょう。)
以前、私がSteve Jackson Games とSteve Jackson Games のサイトの翻
訳権獲得のための交渉を行っていたとき、(その交渉においては)全くの部
外者であるはずのグループSNEがダメ出しを行ったために交渉が中断され
る(交渉は無期延期となりました。)ということがありました。(詳しくは、グル
ープSNEの2003年4月分のガープスQ&A(現在(2006年)では確認で
きません。)を参照してください。)
ここで、グループSNEが言いたい事をまとめると、「われわれの作品の売
れ行きに不利な影響を与えることは行ってはならない。」となるのですが、こ
れがGURPS全体にとって、そしてグループSNEにとって本当によいことで
あるのかどうかは非常に疑問です。
ここで、百鬼夜翔の54〜55ページにある、名前だけが紹介されている技
能を考えてみましょう。これらの技能のほとんどは、英語版のGURPSに対
応する技能が存在しますが、それらの技能には技能無し値の記述がついて
いません。(英語版のGURPSの対応する技能には実にさまざまな技能なし
値が存在し、キャラクターの(行動の)幅を広げてくれます。)また、全く同じ内
容を表す技能なのに、技能の型や難易度が違うこともしばしばです。(基本
的に、百鬼夜翔の技能のほうが難易度が高いと考えて間違いありません。)
このことは、これらの技能が日本語のGURPSの独自の展開で生み出され
た技能であることを示していると考えられます。他にも、百鬼夜翔、249〜2
50ページで紹介されている追加選択ルールは、同じ状況に対する英語版の
GURPSのルールとは明らかにゲームバランスが異なっています。(高圧に
関するルールは百鬼夜翔のルールが厳しすぎ、電撃や放射能に関するルー
ルには英語版に存在する「致命的なルール」が存在しません。)
しかし、これは日本語版のGURPSしか知らない人にとっては非常に不親
切なことです。サイトのQ&Aなどの滞り方からして、グループSNEが多忙で
ある(ないし、少なくともそう装っている)ことはほぼ間違いないので、仕方が
ないのかもしれません。しかし、それならばなぜグループSNEはSteve Jack
son Games のサイトの翻訳を認めようとしないのでしょうか?Steve Jackson
Games のサイトには、
下の記事
にも書いたように、(英語版の)GURPSに
対する大量のサポート記事があり、それらは現在(2003年10月)の日本語
版のGURPSの問題に対するサポートとしても使えるものが多いのです。(私
が
《魔法の目》(参考資料)
の呪文を載せたのはそのためです。)権利を濫
用されることを懼れていると考えられなくはないのですが、Steve Jackson G
ames もそのようなことを認めるはずがありません。(Steve Jackson Games
も、自社の作品が売れることを望んでいます。そのため、私の交渉でもPYR
AMIDとGURPS LITEの翻訳はできないことがほぼ確定していました。)そ
のため、Steve Jackson Games のサイトの記事の翻訳が(一部でも)認めら
れれば、志ある人たちがグループSNEの代わりにSteve Jackson Games の
GURPSのサポート記事を翻訳し、多くの日本語版GURPSのユーザーがG
URPSをより楽しめるようになるのです。
私は、少なくとも現在(2002〜2003年)のグループSNEの活動には若干
問題があると感じているのですが、その中でもかなり気になるものに「ある刊
行物の中ですでに発見された間違いを、次の刊行物で訂正しないこと」があ
ります。(TCGの「モンスター・コレクション」をやっている(やっていた)人なら
ばよくわかると思われますが、今回は「モンスター・コレクション」の話題は載
せません。)
GURPSでこの例を挙げると、マーシャルアーツが完訳版になった際に「武
器の達人」(だけ)で習得できるマンガ技能の中に<経穴>が入っていないとい
うミス(これは、私がグループSNEのQ&Aに質問して、訂正がなされたミスで
す。なお、英語版のGURPSでは【強化受け】、<強靭精神>、<予知受け>、<経
穴>、<八艘跳び>も「武器の達人」だけで習得できることになっています。)
それ以外にも、大判になってからの日本語版のGURPSには、(誤りとは言
えないものの)誤解を招いたり、非常に読みにくかったりする記述がいろいろ
とあります。これは、角川スニーカー文庫(角川スニーカーG文庫ではありませ
ん。)版(ごく初期の日本語版のGURPSです。)のベーシックと、角川スニーカ
ーG文庫版(最終刷)のベーシック、そしてベーシック完訳版とを見比べてみれ
ばよくわかります。角川スニーカーG文庫版が(他の二つに比べて)圧倒的に
読みやすいのです。
このことから、文庫版GURPSの時代に培われてきた「日本語版のGURPS
の判りやすい記述法」は、GURPSが大判になる際に(グループSNEから)失
われてしまったと考えることができます。(例外は百鬼夜翔(旧妖魔夜行)です
が、そこで行われた変更が「改善」なのか「改悪」なのかは議論が分かれると
ころなので、ここではそのことに触れないことにします。)そのため、日本語版
のGURPSについて考える際には、(もし持っているならば)文庫版のGURP
Sも参照するべきなのです。
日本語版のGURPSの展開の中にはいろいろと本来のGURPSのあるべき
道から外れたものが多いのですが、その中で特に気になるのはいわゆる「ぐる
ぐるターン」制(ルナル完全版、15ページを参照してください。)です。
このルールの問題点はたくさんあるのですが、特に大きいのは<先読み>技
能や【相打ち】の格闘動作の意味がなくなることです。「ぐるぐるターン」制だと、
基本的に先手を取った側の行動を知ってから後手の側が行動を決定できるた
めに、先手を取った側は<先読み>で後手の側の行動を知ることができなくなる
のです。これには、<先読み>で行動を読まれた時点で後手の側の行動を宣言
させるという解決策が存在しますが、この場合、行動順が先手を取った側と後
手の側の間にあって、かつ、<先読み>を行っても行われてもいない第三者が
後手の側の行動(宣言)を知った上で行動できる、という別の問題が生じます。
【相打ち】の場合も同様で、先手を取った側が後手の側に【相打ち】を試みた
場合、「ぐるぐるターン」制の場合は後手の側がそれに応じてフェイントをかけ
ることができるのです。これには【相打ち】を「待機」と宣言する解決策がありま
すが、これでは後手の側がフェイントを試みたときに、それに対して先手を取っ
た側が【相打ち】ではなく普通の攻撃を選択できる、という別の問題が生じます。
私がGURPSのプレイヤーをやるときには、圧倒的に女性キャラクターを選ぶ
ことが多いのですが、これには女性キャラクターの方がやりやすいという理由の
他に、日本語版のGURPSでは男性の方が基本的に不利であるという理由があ
ります。(ベーシック完訳版、259ページにある、急所としての鼠蹊部のルールを
参照してください。)これは(少なくともルール上は)非常に厳しいペナルティーで
あるにもかかわらず、現在(2003年10月)の日本語版のGURPSではその他
の男女差のルールも、それによるCPの変化もフォローされていません。(一応、
武神降臨(35ページ)にはそのフォローのためのルールが載っていますが、これ
は武神降臨で便宜的に定めたハウスルールと考えるべきものです。)
しかし、英語版のGURPSでは、女性は女性でそれなりに不利な点を持ってい
ます。同じだけ酔うのに必要な酒の量が男性の0.6倍になり、(人間の被曝量に
換算して)生まれてからの累積被曝量が2.5Sv以上になったら生殖能力が永久
に失われてしまうのです。(男性の場合は、最近1週間以内に1Sv以上の放射線
を被曝した時に生殖能力が一時的に失われるだけです。)
ここからもわかるように、日本語で紹介されているGURPSの情報は本来の(英
語版の)GURPSが持っている情報に比べればごくわずかなものです。GURPS
の新しい世界を見出そうとするならば、グループSNEの独自の展開としてのサプ
リメントよりもむしろ英語版のGURPSに頼るべきなのです。(GURPSの原書を
買えとは言いません。
《魔法の目》(参考資料)
で示されているように、Steve Ja
ckson Games のサイトにある(英語版の)GURPSのサポートを読むだけでもかな
りの情報が得られます。)
最近、日本語版のGURPSを取り巻く情勢にはいくつか気になる点があるので
すが、その中で特に気になるのは特徴(妖力、超能力など)を増強、限定するとき
に生じた端数を切り上げることです。(なお、初期(文庫版の時代)の日本語版の
GURPSは基本的に増強、限定の端数を切り捨てます。)これは現在(2003年1
0月)、英語版のGURPSでも基本的に「正式な」ルールとされているのですが、問
題となるのは「端数切り上げ」の意味です。
例えば、10CPの妖力と−10CPの弱点にそれぞれ(合計で)−15%の限定を
かけたとき(端数をつけた状態で、それぞれ8.5CPと−8.5CPになります。)の
ことを考えてみます。英語版のGURPSでは、「端数切り上げ」とした場合は「ある
値の絶対値を、その絶対値を下回らない最小の自然数に置き換える」ことを表す
ので、それぞれ9CPと−9CPになります。しかし、日本語版のGURPSでは、「端
数切り上げ」は「ある値を下回らない最小の整数を求める」と解釈されているので、
それぞれ9CPと−8CPになってしまいます。
このような問題が生じたのは、GURPSを日本語に翻訳しているグループSNEの
(翻訳)能力によるものが大きいと考えられます。グループSNEは他にも「誠実」と
訳すべき特徴を「正直」と訳したり、「縮小」での移動力の計算法を間違えたり、「気
温耐性」(百鬼夜翔、64ページを参照してください。)で華氏温度で書くべきところを
摂氏温度で書いたり(これは現在(2003年10月)の時点では是正されていません。
また、英語版のGURPSのルールからして、「気温耐性」の「暑さのみ、ないし寒さの
み」の限定は−50%であるべきです。)、「トリックスター」の解釈を間違えたり(英語
版のGURPSでは「トリックスター」は「危険中毒」とも訳すこともできるような特徴で、
「普通の」人をからかうことはありません。)と、いろいろな(翻訳の)間違いをしてい
ます。
そのため、日本語版のGURPSを読むときには、基となる英語版のGURPSは何
か、ということを心に留めておくべきなのです。
日本語版のGURPSのルールブックを読んでいるとわかるのですが、ほとんどの
場合は参考文献の項の翻訳、記述を省略しています。(パワーアップには参考文献
の記述がありますが、これはまだ例外的なものです。)文庫版のルールブックならば
紙面の関係上仕方がないのですが、大判のルールブックではこれは本来省略すべ
きものではありません。
というのも、英語版のGURPSのほとんどは、広範な資料を基に調べ上げたデータ
を、編集者が自分の表現したい世界を再現するために簡潔で、読者(一般的なアメ
リカ人)にとってわかりやすいルールにまとめ上げたものです。そのため、英語版の
GURPSの中には現実と記述がいくらか食い違うものも出てきてしまいます。
しかし、それらの参考文献を見れば、編集者が再現したいと望んでいる「世界」は
自ずから明らかになります。私が見てきた限りでは、英語版のGURPSの記述は、
一般的なアメリカ人に参考文献で紹介されているような「世界観」を伝える分には全
く問題がありません。(ほとんどの問題は「参考文献」が偏っていることや、一般的な
アメリカ人に解りやすくするために事実を少し枉げて説明することで生じています。)
また、英語版のGURPSの記述は、(そのルールブック全体において)一貫した論
理を持っています。(たまにそうでないものもありますが、その場合はほぼ間違いな
くSteve Jackson Games のERRATAなどでフォローがなされます。また、ルールブ
ックの記述に問題がある場合は、Steve Jackson Games にそのことを伝え、それが
もっともであるとされ次第訂正がERRATAなどに載ります。)
そのため、GURPSのルールブックにある記述に疑問を持ったときには、参考文献
やERRATAなどにも当たってみるべきなのです。
ドラゴンマークのディーヴァは、せいぜいTL10の技術しか使わないとルールブック
に書いてありますが、それは大きな間違いです。例えば、ディーヴァの使うD・ドール
のうち、「プティット」は「重力反発場」(いわゆる反重力)を用いて浮遊しますが、この
「重力反発場」はTL12の技術です。(TL10の記述のところにある「人工重力」は、
「反重力」とは全く違う技術です。)さらに、ディーヴァ自体がロボットのようなものだと
すると、(英語版のルールから)ディーヴァの複雑度は10(知力を15にするのに必
要)ないし16(敏捷力を16にするのに必要)はあることになります!このようなことを
するには、少なくともTLが13以上でなければなりません。(しかし、ディーヴァは「一
部の分野の技術だけが特に進んだ世界」からやってきた、という可能性もあるので、
そのこと自体についてはルールブックの記述が間違っている、としか言えません。)
ここで、なぜこのような間違いが生じたかを考えてみると、日本のGURPSではTL
というものをしっかりと認識していない、ということが原因として挙げられます。もとも
と、TLはその世界における技術の水準と、それによって手に入れられるものを示す
絶対的な指標です。(英語版のGURPSの場合、TL8以上の世界ではこの区分は特
に厳密に適用されます。)そのため、GURPSのシナリオでは、PCやNPCがどんな
装備を使うのかを明確に定め、それに応じてそのシナリオの舞台のTLを考えるべき
なのです。
ドラゴンマークやルナル、コクーンのルールブックを見ていると、「知力 −」とい
うとんでもない概念に出くわします。どうも普通の意味での知的な判断ができない
ということを指しているらしいのですが、それは大きな誤りです。
そもそも、GURPSにおいては、知力はさまざまな意味に解釈できます。例えば、
普通の知的生物の場合は人間の大人の平均値を100としたIQ(知能指数)の1
割、人工知性の場合は(ルールにより解釈は異なるものの)「複雑度」の1次関数
(これらは英語版のGURPSでの正式なルールです。)、動植物の場合は「どれだ
けの調教を施せるか」(これは私見です。しかし、GURPSで猫の知力が犬のそれ
より低いとされている事実を説明する方法は他に考えられません。)で知力は定
められます。ここで、コンピュータ(アンドロイド)のキャラクターを作るルール(GU
RPSの英語版でのみ紹介されています。著作権および翻訳権に抵触するので、
ここでそのルールを紹介することはできません。)には、「知性」を持たない人工
知能(現実の(われわれの)世界では、「アイボ」や「アシモ」、「ELIZA」(私ではあ
りません。実際には「知性」を持たないにもかかわらず人間としか思えないような
会話をこなす人工知能のプログラムです。)あたりが該当するでしょう。)も知力を
きちんと持っていると明記されています。それらの知能は限定された方面にしか
はたらかないだけなのです。このため、「知力 −」に該当するものとして考えら
れるものは、単なる動かない無生物か、入力された「動作命令」を逐次的にこな
すだけの遠隔操作ロボットしかないのです。(なお、「掲げている斧を振り下ろせ」
という命令は「動作命令」になりえますが、「目の前の敵を攻撃しろ」という命令は
(敵を敵だと認識する判断を下さなければいけないので)「動作命令」にはなりえ
ません。また、「まっすぐ3歩歩き、そこから右に曲がって5歩歩け」という命令も
(命令の処理を記憶する必要があるので)「動作命令」にはなりえません。)
以前から気になっていたことなのですが、多くの日本のGURPSのプレイヤーや
GMは、部位狙いの宣言がない攻撃は全て胴体に命中すると考えているようです。
これは誤りです。GURPSの上級戦闘ルールには、攻撃の命中個所を3Dの値で
決める、というルールがあります。(ベーシック完訳版、146ページを参照してくだ
さい。)これが大きな意味を持つのは、流れ弾などの「偶然の」攻撃を考えるときで
す。(ランダムに命中部位を決めるルールを使うときの部位狙いの修正は、Steve
Jackson Games のFAQによれば、普通の攻撃にはかかりますが、「偶然の」攻撃
にはかかりません。)
ここで思うのですが、クリティカル表(ベーシック完訳版、256ページ)の「〜を狙
ったとき」とある記述は、全て「〜に攻撃が命中することになったとき」と読むべき
ではないでしょうか。実際には部位を狙ったにせよ、「偶然の」攻撃によって「偶然
に」当たったにせよ、「ある部位に攻撃が命中する」という事実には変わりがない
からです。
また、以上のことから、攻撃の判定の手順は、ルールブックには特に書かれて
いないものの、普通の戦闘の場合は「命中部位決定」、「命中判定」、「防御判定」
(または「クリティカル効果決定」)、「ダメージ決定」の順にするべきであると思料
されます。(「偶然の」攻撃の場合は「命中判定」と「命中部位決定」の順番を入れ
替えてもかまわないでしょうが。)
(この記事は、NiKe氏からいただいた意見を元に、全面的に訂正をしました。)
いくつかのルナルに対する意見を述べているサイトを回っていて気がついたの
ですが、ほとんどのサイトでデルバイの黒色火薬銃は価格が高いために使えな
い、と断言されています。しかし、これは見当違いだというしかありません。
まず、標準的な銃器には「故障」(ベーシック完訳版での訳語です。サイバーパ
ンクでは「信頼」と訳されています。)値というものが定まっており、命中判定時の
出目がその値以上だと(弾詰まりを起こすなどして)銃が発射できなくなってしま
います。(その銃器を発射できるようにするための方法は、銃器によって異なり
ます。)普通のTL4の黒色火薬銃では、「故障」値は「14」が標準です。「故障」
値は銃器の品質によって変化しますが、COMPENDIUM IIによれば最上品質
(標準価格の30倍以上)でも「故障」値は+2にしかなりません。しかし、デルバ
イの黒色火薬銃のデータには、「故障」値は定義されていません! 「故障」値が
定義されなくなるのは、英語版のGURPSによれば、少なくとも「故障」値が16を
超えているとき(弓の「故障」値がこれに該当します。)であるので、デルバイの黒
色火薬銃はとんでもない品質を誇っていることになります。(グループSNEのQ
&Aによると、これはデルバイの「黒色火薬」が黒色火薬とは名ばかりの(双子
の月の魔法の影響を受けた)「謎火薬」であるため、ということになっています。)
また、デルバイの黒色火薬銃の弾丸は、通常の防具の防護点だけを半分に
みなし、抜けた分の致傷力を修正無しでダメージとするという、かなり変則的と
思われるルールでダメージを計算します。GURPSのルール上、この計算法で
ありうるのは、「デルバイの黒色火薬銃は口径が60口径よりも大きい、鉛の球
形徹甲弾を発射するもので、(ダメージ修正は(×2÷2)=×1となります。こ
のことについては、
下の記事
も参照してください。)ルナル世界の「防護点」は
必ず「徹甲攻撃無効化(仮)」(英語版のGURPSで紹介されている「防護点」へ
の特別増強)を最大レベルでかけてある。(ルナルでの「防護点」に必要なCP
と、「徹甲攻撃無効化(仮)」の修正率から計算できます。このため、<多足のも
の>が発明した高速振動剣で攻撃した場合、生来の防護点は3分の1とみなす
ことになります。)」という、非常に特殊な設定だけですが、この設定ならばルー
ル上の問題はほとんどありません。この設定によれば、デルバイの黒色火薬
銃の弾丸は「口径が60口径よりも大きい、鉛の球形徹甲弾」などという非常に
特殊なものとなるため、弾丸の価格が高くなっても仕方がないのです。
さらに、英語版のGURPSによれば、TL4以下の黒色火薬銃の価格と重量
は、その銃器を管理するために必要な道具一式を含めたものなので、デルバ
イの黒色火薬銃の価格と重量は、非常に安く、軽いものであるとすら言えるの
です。(ただ、
その他もろもろのこと
から考えて、デルバイの黒色火薬銃の設
定は偶然正しい結果になっただけであるということも十分に考えられます。)
(注:COMPENDIUM IIによると、徹甲弾は胴体に当たっても貫通してしまう
ので生命力の半分より大きいダメージを与えることはないことになっています。
(これは現在(2003年7月)、(正規の)日本語版のGURPSのルールではあ
りませんが、正規の英語版のGURPSのルールとなっています。)このルール
を採用する場合、この記事の後半部分の論理は全く成立しなくなります。)
次へ進む
前へ戻る