《神託/夢占い》
(TRPGに対する意見)
最新更新日:2013年11月11日(月)
これはGURPSに限定された話ではないのですが、TRPGのルールは、そのTR
PGが表現する世界を「立体」としたときに、この「立体」の「断面図」に過ぎないと考
えることができます。この考え方を採ると、「断面図」であるルールをどのように投影
して「立体」である世界とするかによって、この世界の世界観が大きく変わってきま
す(以下の例を参照)。これは、GURPSなどの汎用TRPGを真の「汎用TRPG」と
するためには必要な要件かもしれません。
例:d20(3.5版)(システム名)においては、クレリックは日々の呪文を選択して準
備するために瞑想をし、あるいは、祈りを捧げます。これは1つのルールです。この
ルールに対しては、例えば「クレリックは、瞑想または祈りに対して自分が良いと思
う呪文を選択して獲得する」という解釈や、「クレリックの守護神格は、クレリックの
瞑想または祈りに応じて、そのクレリックにとって良いと思える呪文を選択して授け
る」という解釈など、多種多様な解釈が可能です。これは上述したルールの投影に
相当します。そして、これらの投影からは、例えば「神格が実在しない」世界観や、
「神格が信者の信仰心に対して種々の恩恵を与える」世界観など、相異なる種々
の世界観を導くことができます。
(注:上述したd20(3.5版)の用語は、ダンジョンズ&ドラゴンズ(3.5版)に使用
されている用語を準用したものです。)
久しぶりに「ガープス・ルナル・リプレイ 青嵐の島篇(下)」(以下リプレイ)を紐解
いたら、<蝙翔法>(肉体/至難)という(影闘法の)技能の記載が目に止まりました。
これは影タマットのキャラクター(特にPC)を作成して運用する際において非常に厄
介な問題です。というのも、GURPS第3版には「肉体/至難」という技能の難易度
が存在せず、かつ、リプレイには「肉体/至難」という表記についての特別の説明
がないので、例えば以下のように「肉体/至難」に対する解釈が割れうるのです。
(他の解釈が出てくることもあるでしょう。)
「肉体/至難」は「肉体/難」の誤記である。
「肉体/至難」は「精神/至難」の誤記である。
「肉体/至難」の技能は「肉体/難」の技能に常時−1のペナルティーを科
したものである。
「肉体/至難」の技能は「肉体/難」の技能の必要CPを2倍にしたものであ
る。(注:「精神/至難」の技能は、(「知力−4」レベルを考えないとすると)
「精神/難」の技能に対して必要CPが2倍となります。)
「肉体/至難」の技能は「肉体/難」の技能の必要CPを3倍にしたものであ
る。(注:これはGURPS第4版における万能技能と同様の発想です。)
これはGURPSに限定された話ではないのですが、TRPGのセッションではしば
しば「番狂わせ」が発生します。急に追加のNPCが必要になる場合も多いのです
が、このような時に作り置きのNPCのデータを流用させることができると非常に便
利です。このため、TRPGのセッションに際してサンプルキャラクター集を前もって
用意しておくことは、決して悪い選択肢ではないと言えます。(GURPSのようにキ
ャラクターの作成に手間がかかるTRPGの場合は、よい選択肢であると言っても
よいでしょう。)
ここで思うのですが、TRPGのセッションにおける流用を目的としてサンプルキャ
ラクター集を用意する際には、流用される可能性のあるキャラクターのデータを読
み込んで、そのデータが遊ぼうとしているTRPGのセッションのルールおよび雰囲
気に適合するかをチェックしておくべきでしょう。サンプルキャラクターのデータを流
用することでセッション中にルールの整合性が失われたりセッションの雰囲気が台
無しになったりすることは避けなければなりません。「本筋」ではない「番狂わせ」に
対応するためのサンプルキャラクターが「本筋」を崩壊させるのであれば、そのサ
ンプルキャラクターの使用は本末転倒だと言わざるをえません。
また、不特定多数の人に流用させるためのサンプルキャラクターを作成する際
には、キャラクターのデータを公式ルールに忠実に従わせることに留意するべき
です。上述もしたように、TRPGのセッションにおいて流用されるサンプルキャラク
ターがセッション中のルール運用およびセッションの雰囲気に悪影響を与えるこ
とは避けなければなりません。そして、サンプルキャラクターを流用する不特定多
数の人が望むセッションの雰囲気および使用される「ハウスルール」を知ることが
できない以上、サンプルキャラクターの作成の際に「基準」となるものは公式ルー
ルしかないのです。
(注:
《戦士作成》(サンプルキャラクター)
に記載されたサンプルキャラクターは、
基本的に不特定多数の人に流用されることを想定していません。)
以前、「いわゆる“なりきりチャット”と“TRPG”との違いは、“G”の有無、すなわ
ち、ゲーム性が存在するか否かの違いである。」という意見を聞きました。これは
一理ある意見だとは思いますが、私の見解はこれとは違います。
私は、いわゆる“なりきりチャット”と“TRPG”との違いは、「ストーリーを紡ぐため
に行われるものであるか否か」であると考えています。すなわち、いわゆる“なりき
りチャット”は「ストーリーを紡ぐ」ことを目的としていないので、キャラクターの雰囲
気を伝えればそれで用が足ります。これに対して、“TRPG”は「ストーリーを紡ぐ」
ことが目的(の1つ)となるので、遊ぶ人たちの中にある「伝えたいこと」を、互いに
伝えあうことが重要となるのです。
以前の記事
でも触れた話ですが、私は、オリジナルの武器にそれ専用の技能
を設定することはGURPSの汎用性を保つという観点から考えて好ましくないと考
えています。しかしながら、これは、必ずしも、技能なし値を持たないオリジナルの
技能が多数設定されている世界が好ましくない、ということを意味しません。GUR
PSにおける技能なし値は対象の技能に対する常識レベルの知識を必要とするた
め、その技能の本質的内容が秘匿されている場合、または、その技能が常識レ
ベルの知識では試行すらできないほど難しい場合は、技能の技能なし値が「なし」
となるからです。(これはGURPS第3版とGURPS第4版とで共通した思想です。
ベーシック【第4版】キャラクター、168ページおよびベーシック【完訳版】、66ペー
ジ(サイドバー)を参照してください。)
私が
上記の記事
のようなオリジナルの武器における専用技能で問題視してい
るのは、この専用技能で扱われる武器が公知であるにもかかわらず、その武器
を扱う専用技能の技能なし値が十分に設定されていない、ということです。武器
は基本的に相手に命中させるものであるので、その武器を使用しているところを
見たことがあるのならば、誰もが見よう見まねでその武器を相手に命中させよう
とすることができるはずです。(これは、敏捷力基準の技能なし値で武器を扱うこ
とに対応します。他の技能を基準として武器を扱う場合の話については、
こちら
の記事を参照してください。)このため、オリジナルの技能を設定する際には、そ
の技能が公知であるか否かと、その技能に対する常識レベルの知識を持ってい
る(だけの)人がその技能の「まね」をする場合にどうなるかと、の両方を考えて、
オリジナルの技能に対して適切な技能なし値を設定する必要があるのです。
以前の記事
に関連する話ですが、サイズ修正に対する見解がPYRAMIDの3
/34に記載されていました。その見解によりますと、亀(のような体形の生物)の
サイズ修正は「一番大きい寸法」(ベーシック【第4版】キャラクター、21ページを参
照してください。)から求められるサイズ修正よりも1大きい値に、蛇(のような体形
の生物)のサイズ修正は「一番大きい寸法」から求められるサイズ修正よりも2小
さい値になるのだそうです。(該当の記述は、
こちら
のプレビューからも確認でき
ます。)サイズ修正が体形によって±2の範囲で変化しうるとすると、サイズ修正を
決定する「基準」は厳密ではないのかもしれません。そうだとすると、GURPS第
4版においては(原文から)サイズ修正が示す長さが統一されていないという問題
(ベーシック【第4版】キャラクター、21ページの「サイズ修正表」とベーシック【第4
版】キャンペーン、203ページの「サイズ・速度/距離表」とを見比べてみてくださ
い。)も理解できないことではありません。(ルールの整合性から考えると、決して
褒められたことではないのですが。)
GURPSが第3版から第4版になって最も大きく変わった点の1つには、敏捷力
と知力の価値が引き上げられたことが挙げられます。(能力値25未満では、敏捷
力と知力がより割高となりました。)この結果、多くのキャンペーンにおいてキャラ
クターの敏捷力と敏捷力が引き下げられ、平均以下の体力と生命力を持つキャ
ラクターが減ることになりました。
例えば、GURPS第3版の武神降臨では150CPの格闘家で体力9だったり敏
捷力16だったりすることが決して珍しくなかったのですが、GURPS第4版で同様
の企画を再現しようとした場合、このようなコンセプトのキャラクターはCP総計が
150CPでは足りなくなったり、技能や能力値等が下がった劣化版となったりして
しまいます。(UPDATEには、「消費CPが同じになるように敏捷力と知力を変換
する」という指針があるので、それに従うとGURPS第3版の敏捷力16(80CP)
はGURPS第4版の敏捷力14(80CP)に変換されます。)
さらに、体力とヒットポイントをより簡単に増加させられるようになった(第4版M
ARTIAL ARTSで、戦闘系技能に20CPを費やす(+特定の流派に10CP費や
す)ごとに1つ獲得可能になる「特典」の中に、「ヒットポイントを体力の2倍にまで
高められる」ものが追加され、ヒットポイントを体重基準で獲得できるルールが紹
介されたので、ヒットポイントの増加が更に楽になりました。)ので、体力19(「突
き」の基本ダメージが2D−1になるので、「サイコロ1個ごとに」加算されるように
なった<空手>等のダメージボーナスが倍増します。)やヒットポイント20(または
30)により
高いヒットポイントの恩恵
(「高いHPと衝撃」(ベーシック【第4版】キャ
ンペーン、77ページ)も参照してください。)を受けることが現実的になります。ま
た、「巨人症」と「肥満」のペナルティーが(少なくとも武神降臨のような企画に関
しては)大幅に減少している(特に、「巨人症」で格闘だった攻撃範囲が1に伸び、
体力の必要CPが−10%されることが大きいです。)ので、それらの特徴を持っ
たキャラクターは確実に増えることが予想されます。
このような変更が行われた背景には、現実をよりよく反映させようとする意図が
あったのではないかと考えることができます。上の例で言うと、現実世界で「流派
無制限の格闘大会」が開催されたときに、「体の大きさとパワーにものを言わせる
格闘家がしばしば登場する方がより自然である」と考えられたならば、そのような
格闘家がよく登場するようにルールを改定するわけです。このようなルールの改
定は、GURPSのみならず、TRPG全般にとって避けられないと考えるべきものな
のかもしれません。
ベーシック【第4版】キャラクター、91ページには「防護点/剥離装甲」を「“莫大
なダメージに耐えることができるが、それだけのHPを正当化するにはサイズが小
さすぎる”超人を再現する」ために使うという指針がありますが、これは他のRPG
によく見られるような「多くのヒットポイント」とは全く違う意味合いを持っています。
GURPS第4版における「防護点/剥離装甲」とヒットポイントの最大の違いは、
「“質量や構造の頑丈さ”を伴うかどうか」です。そのため、衝突のダメージ(ベーシ
ック【第4版】キャンペーン、88ページ)はヒットポイントに依存し、ヒットポイントは
体力によりその値(上限)が決められる一方、「防護点/剥離装甲」にはそのよう
な「副作用」がないのです。しかし、2つの違いはそれだけではありません。「防護
点/剥離装甲」はあくまで「防護点」なので、衝撃やダメージボーナス、負傷の蓄
積の影響を受けることはなく、素手や「攻撃部位」で攻撃した相手に対して「自分
の負傷」(ベーシック【第4版】キャンペーン、38ページ)を与えるという利点がある
一方、「徹甲除数」等により無視されうる、ダメージの回復がヒットポイントの回復
速度にしか依存しない(「高いHPと回復」(ベーシック【第4版】キャンペーン、82
ページ)を参照してください。)という欠点も併せ持っています。
しかし、この程度の違いは「世界観の再現」という点から考えるとまだ許容範囲
であると考えることもできます。例えば、第4版HIGH−TECHには「「財産はない
が良質の装備を持っている」ことを「その装備そのものを使うときだけ+1の修正
がある」特典を用いて再現してもよい」という指針があります。ルール的には様々
な問題があるかもしれませんが、実際にゲームをする際にはこの指針で十分「世
界観を再現」することができます。同様のことは、百鬼夜翔の「武器の手」(「専用
アイテム」で再現できる分離型は除く)を再現する場合にも言えます(対応する特
徴である「攻撃部位」は原則的にダメージが「突き」基準で「自分の負傷」の対象
になります。)が、これも同じく(「攻撃部位」のみに対する)「追加攻撃体力」や「防
護点」を使えば「世界観の再現」という点から見た問題のほとんどは解決します。
GURPSはどんな世界も再現できる汎用TRPGですが、再現される世界そのも
のはGURPSではないので、厳密に突き詰めて考えるとどこかで「齟齬」が生じえ
ます。GURPSである世界を再現して遊ぶ場合は、このことを頭の片隅に入れて
おき、多少の「齟齬」は大目に見る心構えを持つべきでしょう。
以前の記事
に関係することですが、最近(MARTIAL ARTS以降)の第4版
GURPSのサプリメントには、ゲーム世界を大きく変えるルールが載っているもの
が多いような気がします。これは、第4版BASIC SETにある「基本の哲学」を解
説するサプリメントが一通り出版され、「別の哲学」も必要とする世界に対する需
要に本格的に応えていく段階に入ったことを意味しているのかもしれません。もし
そうならば、
以前の記事
で述べたGURPS第5版への流れは着実に進んでいる
ものと考えることができます。
以前に自分が書いた2つの記事(
こちら
と
こちら
)を読み返していて気が付い
たのですが、GURPSのサプリメントの多くはPOWERSやMYSTERIESのよう
に新しいデータがほとんど載っていないものと、THAUMATOLOGYやMARTI
AL ARTSのように導入するとゲーム世界が大きく変わるルールがたくさん載っ
ているものの2つに大別することができます。ここで、サプリメントは全て第4版G
URPS用のものを想定しています。
前者のタイプのサプリメントは、多くの場合「データの運用を解り易く説明する」
ことないし「世界観を伝える」ことに重点を置いています。GURPSの場合、どんな
世界にでも対応できるようにルールが作られているので、背後にある「哲学」も含
めてルールやデータをよく把握していないとうまくルール運用ができないのです。
しかし、これではごく一部の、GURPSに非常に詳しい人しかうまくルール運用が
できません。そのため、「この状況ではこういうルール運用をする」という手引きが
必要になるのです。
英語版GURPS第4版のサプリメントを読み比べていて気が付いたのですが、
GURPS第4版のサプリメントには組み合わせて使うとバランスが崩壊しかねな
いルールが多く含まれています。例えば、FANTASYには「目標の体内で霊薬
を合成することで霊薬の合成時間を週単位から時間単位にする」というルール
があるのですが、これを魔法大全にある「「超発明家」は霊薬の作成時間を通
常の作成時間2日につき1分にできる」というルール(204ページ)と組み合わ
せると、通常は作成に20週間かかる「豊穣」の霊薬も、目標に材料を飲ませて
から25秒で効果を発揮させることができます!
また、GURPS第4版のサプリメントには互いに矛盾するルールも多く含まれ
ています。<草木秘伝>で霊薬(にあたるもの)を作るときの材料費が、FANTA
SYだと<錬金術>で同等の霊薬を作るときの材料費の5分の1、魔法大全(20
4ページ)だと<錬金術>で同等の霊薬を作るときの材料費の半額ないし$100
引きの高い方になる、というのはそのいい例でしょう。
GURPSに組み合わせると問題が生じるルールが存在するのは、それぞれの
ルールの背後に表したい別々の世界があるからです。そのため、GMは世界観
に応じてどのルールを使うかを決めなければなりません。また、実際のセッショ
ンで問題が発覚した場合は、GMが問題をどう処理するかを考えなければなり
ません。GURPSが汎用システムである以上、これは仕方がないことですが、こ
れがGURPSのとっつきにくさという意味での「難易度」を上げているのは間違
いないでしょう。
2009年1月8日に、紙1枚に印刷しきれるGURPSの超簡易型基本ルール
として、ULTRA−LITEが(ベータ版ながら)発表されました。私も気になったの
で早速ULTRA−LITEを読んでみたのですが、特徴やCPの概念がほとんどな
いことに驚かされました。CPの代わりにはもっと大雑把な「レベル」という概念
が導入されているのですが、財産や反応修正などのごく一部の例外を除いて、
特徴は全く考慮されていないのです。
以前の記事
では、キャラクターの性質を
どんなものであれ的確にキャラクターシートに反映させるのがGURPSの本質
だと主張している(私はそう考えている)のですが、ULTRA−LITEを読む限り、
それだけがGURPSの本質ではないのかもしれません。
ずいぶん前の話ですが、「ルナルはエピック(≒伝説になるような話)を目指
している」という旨の発言がルナルのリプレイでなされたことがありました。確か
に、その視点からルナルやユエルのリプレイを読んでみると、どの話でもPCた
ちはとんでもなく大きな話に巻き込まれていきます。私はこのような話の展開は
(GMの独りよがりになってPLが置いてきぼりになる危険が高いので)好まない
のですが、どのような話でキャンペーンをするかはそれぞれのGMが決めるべ
きことなので、このことに対して意見するつもりはありません。
しかし、ルナルやユエルのような形の展開には疑問を示さざるを得ません。
ルナルやユエルのリプレイには、明らかに他のキャラクターと違う点がありなが
らキャラクターシートに反映されていないものがあるからです。ルナルの月に至
る子編でPCの間に(エピックな事象に関われるかどうかに関して)明らかに格
差があること、ユエルでセルドが(実権はないにせよ)公爵であり、代理戦士と
して選ばれたことなどがいい例でしょう。キャラクターシートはキャラクターのデ
ータを記録して遊ぶときに確認できるようにするためのものなので、キャラクタ
ーのデータは全てキャラクターシートに書き込まれるべきなのですが、GURP
Sではその意味はさらに大きくなります。
GURPSでは全てのキャラクターをCPで表すことができ、その振り分けを見
ることでキャラクターの能力を判断することが可能です。逆に言うと、GURPS
の本質はキャラクターの能力をどんなものであれCPの振り分けの形で表現で
きる所にあります。(同様の意見をこの前(2008年10月)PYRAMIDでも見
かけました。)キャラクターにある性質を(どのように評価するかは別にして)キ
ャラクターシートに反映させないのはGURPSの精神に反しているのです。
最近思うようになったことですが、GURPSは「ルールを参考に」、ダンジョン
ズ&ドラゴンズ(3.5版)は「ルールを(絶対の)基準に」考えるという傾向が見
られるような気がします。これは、ダンジョンズ&ドラゴンズ(3.5版)が「遊ん
だ時のバランス(楽しさ)」を追及している一方、GURPSが「汎用性とリアルさ」
を第一に考えているためだと思われます。
例えば、ダンジョンズ&ドラゴンズ(3.5版)では10フィートの梯子は銅貨5
枚なのですが、10フィートの棒は銀貨2枚(=銅貨20枚)と、一見して価格の
付け方が変だという点があります。私見ですが、これは10フィートの梯子には
「10フィートまでの穴を楽に移動できる」効果が、10フィートの棒には「(判定
にペナルティはあるものの)離れたところから罠を〈捜索〉できる」効果がある
ためでしょう。つまり、得られる効果に見合った価格設定がされているのです。
逆に、GURPSでは現実世界に焼き直した時の「整合性」を重視するために、
そのようなことは起こらないものと思われます。
この傾向の違いは、それぞれのシステムが目指しているものの違いだと思
われます。ダンジョンズ&ドラゴンズ(3.5版)もGURPSも、「ルールという道
具を用いてある世界を楽しむTRPG」であるという点は変わりません。しかし、
GURPSが楽しむ世界を一切限定していないのに対し、ダンジョンズ&ドラゴ
ンズ(3.5版)は基本的に幾つかの特定された世界を楽しむことしか想定して
いません。そのため、GURPSには「様々な世界にある程度柔軟に対応でき
るようルールブックの描写に少し幅を持たせておき、セッションの現場ではル
ールを参考にGMが判断する」という特徴が、ダンジョンズ&ドラゴンズ(ない
しそれを応用した汎用システムであるd20システム、3.5版)には「使用する
ルールブックの組み合わせによってはゲームが破綻しかねない」という特徴
が見られるのかもしれません。
以前、「TRPGをやる際には参考資料が必要になる」という意見を聞きました。
(ダンジョンズ&ドラゴンズのように)ルールブックやサプリメントなどの他に「参
考資料」が存在しないTRPGを除けば、これはある意味正しいのかもしれませ
んが、少なくともGURPSで私がGURPSのルールブック以外の「参考資料」の
必要性を感じたことはほとんどありません。
これは(英語版の)GURPSのサプリメントの多くは(史料に偏りがないとは言
い切れないものもありますが)かなりのリサーチの基に書かれているので、「参
考資料」と同等の情報が載っているためです。しかも、この「参考資料」の部分
は(基本的に)変わらないので違う(版の)サプリメントを参考にすることもできま
す。(最近(2007年)は、私もGURPS第3版のサプリメントを使うのは「参考資
料」の部分を参照するため(だけ)ということが多くなっています。)
TRPGの「サプリメント」というのは「そのTRPGシステムで、ある状況に対応し
て遊べるように基本となるルールブックに追加するもの」であるはずです。その
点から、TRPGで「参考資料」が必要となるということはサプリメントがないか、
サプリメントの内容に欠落や不備があるということを表していると考えることが
できるでしょう。
最近、「自分達は英語の用語で言えば理解できるのだから、無理に(英語を)
日本語に翻訳する必要はない。」という意見を聞きました。これはTRPGとは直
接関係ないところで聞いた言葉ですが、TRPGにとっても考えさせられる問題
です。結論から言うと、私は「たとえ言語的に問題がないとしても、TRPGの場
合はルールブックの言語を混ぜないほうがよい」と考えています。
第1の理由は翻訳の際に用語や参照ページなどが変わるので、ルールブッ
クの検索や意思疎通が難しくなってしまうためです。原書と翻訳版では(普通)
ルールブックのページが違うので、前者は判りやすいでしょう。後者の例として
は、「Pseudodragon」(ダンジョンズ&ドラゴンズのモンスター)があります。これ
を「シュードドラゴン」(「Pseudo」には「シュード」というルビが振られることが多
い)と読むと(日本語版での名前が「スードゥドラゴン」(実際の発音はこちらの
方が近い)なので)大抵は通じないのです。(この問題は私の周囲で実際に起
こりました。)このような「行き違い」が発生した場合、確認にはかなりの時間が
かかってしまいます。
第2の理由は原書と翻訳版とで使われているルールが同じとは限らないこと
です。本来「翻訳」によりTRPGのルールが変わることはないはずですが、「誤
訳」や「単位の違い」によるルールの違いは完全にはなくなりません。(ダンジョ
ンズ&ドラゴンズの翻訳はかなり善戦しているようですが、それは(単位系もヤ
ード・ポンド法のままなので)同時に「取っ付きにくい」印象も与えてしまっていま
す。)また、翻訳版にはサプリメント(≒引用元)の数が少ないことなどによるル
ールの「ニュアンスの違い」も存在します。(この辺は
以前の記事
も参照してく
ださい。)
第4版用のHIGH−TECHの紹介記事やULTRA−TECH、BIO−TECHな
どを読んでいて思ったのですが、これらのサプリメントは導入するかどうかでG
URPSのゲーム世界が大きく変わります。例えば、ULTRA−TECHを導入す
ると超科学や「サイバネティクス」のルールが整理され、ベーシック【第4版】キ
ャラクターのビーム兵器は超科学のエネルギーパック(容量が通常の5倍)を
用いていることになります。(超科学が認められないとビーム兵器の弾数が5
分の1になってしまうわけです。)現在(2007年12月)私は第4版用のMART
IAL ARTSを持っていないので断言できないのですが、第4版用のMARTIA
L ARTSも上記のサプリメントと同様だと思われます。(これは
以前の記事
と相容れない意見ですが、あの当時にはこのようなサプリメントは存在しませ
んでした。)
これは、基本のGURPS第4版だけでは「表現しきれない」事態に対応する
ためだと思われます。たとえGURPSが第4版の発表直後には「完璧」だと思
えたとしても、GURPSで再現する世界は多岐に亘る(上にどんどん増えてい
く)ので、「表現しきれない」事態は徐々に出てくるわけです。それを補うために
サプリメントが必要になるのですが、それはプログラムに当てるパッチと同様
に基本の内容を少しづつ変えていくことになります。このサプリメントの有無に
よる「格差」が大きくなったら、GURPSは第5版に「進化」するのでしょう。
実は、これはGURPSに限ったことではありません。ダンジョンズ&ドラゴン
ズ(3.5版)でも同様の事態が起こっています。(「プレイヤーズハンドブックII」
にある追加ルールや「即行アクション」の概念はいわゆる「コア3冊」のルール
運用を大きく変えます。)そこから考えると、上で述べた動きはTRPGが「進化
していく」過程の1つなのかもしれません。
かくて世界は広がった(以下サプリメント)を読み返していて気がついたので
すが、サプリメントには様々な(ほとんどが重要な)データがばらばらな場所に
書かれています。特徴などが各種族の解説(と付録)に散っているのはともか
く、呪文が呪文のコーナーだけでなく各種族の解説や街の紹介、付録に分か
れているのは分かりにくい限りです。(巻末の索引に全ての呪文が載っている
のが唯一の救いですが、気がつく人はまずいないでしょう。)「初心者にも分か
りやすいように」と妖術や妖力を基本と上級に分けた百鬼夜翔は、結果として
検索性が悪いという欠点を持つことになったのですが、サプリメントの検索性
の悪さは百鬼夜翔の比ではありません。
ベーシック【第4版】キャラクター、4ページにあるように、GURPSにおいてル
ールやデータの体系化と参照のしやすさは、最も重視される汎用性の次に求
められるものです。その点から言って、サプリメントはGURPSのルールブック
として致命的な欠陥を抱えているのです。
GURPS第4版の、「パワード・バイ・ガープス」仕様の作品としては、リボー
ンリバースはかなり評価できます。(「財産」や「地位」、「階級」などを(それな
りに)考えてルールを適用しているためです。)しかし、リボーンリバースにも
(ユエルなどに比べれば少ないものの)ルール的な問題が存在します。その
中で私が特に気になるのが万能技能の扱いです。
まず、<泥棒!>や<家事!>といった万能技能を、基準能力値ごとに別の技
能として扱っているという問題があります。GURPS第4版では、技能の基準
となる能力値は1つに定まりません。例えば、<罠>は普通知力基準の技能で
すが、罠を捜索する際には知覚力基準で<罠>技能の判定をしなければなり
ません。つまり、例えば<泥棒!>ならば(基本の基準能力値を何にするかは
別として)<裏社会>の判定をするような状況では知力基準で、<すり>の判定を
するような状況では敏捷力基準でただ1つの<泥棒!>技能の判定をさせるべ
きなのです。
次に、<家事!>という万能技能が<家事>という「汎用的な」技能がベーシッ
クで紹介されているにもかかわらず設定されているという問題があります。万
能技能は難易度が至難な上に必要CPが3倍になるものの、それを上回る利
益をもたらします。「技能なし値を持つ技能の成長」のルール(ベーシック【第4
版】キャラクター、168ページを参照してください。)を用いて技能を「連鎖」させ
ても、万能技能には敵いません。(実際にキャラクターを作ってみればよく判り
ます。)それだけ万能技能は強力なのです。そのため、<家事!>という万能技
能を設定するならば、(<家事>の難易度が知力/易であることを考えて)基準
能力値は知力で、<家事><調理><大工><礼儀作法>だけでなく、<会計>(家計
簿などの管理)<御者><動物使役><メカニック>(馬や(馬)車の管理)など、敏
捷力基準で判定した場合は<裁縫>や<運転>などもカバーできるようにしなけ
ればならないのです。
(追記:上記考察の<家事!>とほぼ同様の内容の万能技能が、第4版SUP
ERSに<Servant!>という名前で紹介されています。)
内輪の仲間とTRPGのシステム談義をしていて知ったのですが、ウィッチク
エストはルールが曖昧だと思っている人がいるようです。ウィッチクエストの再
編集版を見る限り、それは誤りです。ただ、WEBで公開されているウィッチク
エストのリプレイにルールを正確に把握して厳密なルール運用をしているもの
が少ないだけです。それでもセッションが成立してしまうのがウィッチクエスト
の特徴ですが、それはあまり褒められることではないでしょう。
それと同様の愚を犯しているのがユエルです。信仰によるボーナス技能が
ユエル、ライト・カスタム、リプレイ(2巻ないしRole&Roll VOL.14掲載分)
で違うのです。(消費CPと技能の難易度から、本来の技能レベルを考えてみ
てください。なお、ギナのデータから、リプレイでは「技能なし値からの技能の
成長」(ベーシック【第4版】キャラクター、168ページを参照してください。)の
ルールを採用していないことが判ります。)<会計>の難易度や「バーサーク」
のCP、<(美術/)彫刻>の基準能力値などが「本来の」GURPSと違うのは、
ユエルが「パワード・バイ・ガープス仕様」のGURPSであるとすればまだ認め
られるでしょう。(
こちら
を参照してください。)しかし、ルール運用の鑑である
べき公式リプレイ(これに関しては
下の記事
を参照してください。)と(「コア」
となる)ルールブックでルールが違うのは、どんなTRPGであれ重大な問題で
す。グループSNEは、このことに関するエラッタを早めに出すべきでしょう。
リボーンリバース・リプレイ「電光の霊操者」の巻末を読んでいて気がついた
のですが、このリプレイはリボーンリバースのルールが確定されていないにも
拘らず発売されたもののようです。(ユエル・サーガ・リプレイ@「かくて宿命は
刻まれた」などに対しても同じことが言えます。)これには非常に問題がありま
す。
そもそも、リプレイとはそのTRPGのルールや世界観を判りやすく紹介しなが
ら、かつ面白く読めるようにした読み物のはずです。内輪のセッションの記録
ならばともかく、そのTRPGのルール運用を周知させる目的も持った公式リプ
レイの場合は、読者がリプレイを読んで「正しく」ルールを運用できるようにしな
ければなりません。(ただその世界の雰囲気を伝えるためだけならば、小説だ
けで用が足ります。)そのため、公式リプレイでのルール運用は、そのTRPG
のルール運用の鑑となるようなものでなければならないのです。
最近、Role&Roll SP2を読み返していて気がついたのですが、Role&R
oll SP2によればユエルは「パワード・バイ・ガープス仕様」なのだそうです。
この「パワード・バイ・ガープス仕様」というのは、十分に気をつけなければなら
ない言葉です。
Steve Jackson Games のサイトによると、「パワード・バイ・ガープス」の主な
特徴には「Steve Jackson Games 以外の会社から発表されることがある」「サ
ポートを充実させやすい」「必要な(GURPSの)ルールブックが少ない」などが
あるのですが、最も重要な特徴は「特定の世界に特化しており、他のGURPS
のルールブックとの整合性が取れているとは限らない」ことです!
ここでユエルについて考えてみましょう。ユエルは「グループSNEから発表さ
れており」「ルナルと同様のサポートを受けることが見込まれ」「(一応)ベーシ
ックがなくても遊ぶことができ」「ベーシックに対してさえルール運用の整合性
が取れていない(
こちら
を参照してください。)」ので、間違いなく「パワード・バ
イ・ガープス仕様」です。
このように、「普通の」GURPSと「パワード・バイ・ガープス仕様」のGURPS
は異なるのですが、日本でのGURPSの展開を見ていると「パワード・バイ・ガ
ープス仕様」であるユエルがGURPSのスタンダード(の1つ)であるかのように
扱われています。そのため、グループSNEはユエルが「普通の」GURPSでは
ないことをもっとアピールするべきでしょうし、遊ぶ人はそのことをちゃんと認識
しておく必要があるでしょう。(そうでないと、日本で「普通の」GURPSを遊ぶ際
に不都合が起こりかねません。)
気づいた人がいるかどうかは分かりませんが、この《神託/夢占い》(TRP
Gに対する意見)の(新しい)記事は、段落分けをはっきりさせて段落の頭に
空白を入れています。(2006年8月12日の更新での話です。)内輪の仲間
から「読みにくい」との指摘を受けたことによる変更ですが、
以前の記事
と
比べて本当に読みやすくなっているのでしょうか? (私にはあまり違いが感
じられません。)
また、
《神託/ルーン占い》(寸評)
や
プレイログその1
のように、(ほとん
ど)全ての行間を1行空けた方が読みやすい、と言う意見もあった のですが、
どうなのでしょうか?
私には、全ての行間を1行空けることで記事全体の長さが倍増し、スクロー
ルバーが扱いにくくなるデメリットの方が大きいように思われます。(このこと
に関して意見がある場合は、
《遅発伝言》(質問およびその返答)
にお願い
します。)
以前の記事
に関連することですが、現在(2006年8月)の時点での旧い
GURPS第4版のFAQによると、「才能」によるボーナスが適用されない状況
は存在しないのだそうです。それが正しいとすれば、「才能」によるボーナス
はD「相対的技能レベル(ベーシック【第4版】キャラクター、166ページを参
照してください。)への修正」と考えるのが最も適当です。(
以前の記事
で指
摘した状況のそれぞれについて考えてみてください。)
この裁定を採用すると、「技能なし値をもつ技能の成長」(ベーシック【第4
版】キャラクター、168ページを参照してください。)を考える場合にも「才能」
によるボーナスが適用されることになり、新しいGURPS第4版のFAQとは裁
定が違ってきます。このような場合、大抵は「新しい方が正しい。」として新し
いGURPS第4版のFAQの裁定を採用するのが普通でしょうが、これを少し
角度を変えて考えてみましょう。
そもそも、技能なし値というのは「使おうとする技能を修得していないときに
使う代用品」です。例えば、<ブロードソード>で扱う剣を(<ブロードソード>の技
能なし値である)<ショートソード>−2で用いている場合、「自分がこれまでに
受けてきた(小さな)剣の技術でこの剣を使っているのだが、この剣はこれま
で自分が使ってきた剣よりも大きいので扱いづらい。」という状況を表してい
ることになります。つまり、技能なし値で技能を用いている場合、実際に使っ
ているのは技能なし値の元になった技能(ないし能力値など)なのです! た
だし、その場合でも技能の使用により学習されるのは本来の技能になるでし
ょう。(「これまでに扱ったことのないものの扱いに慣れる」ように学習が進む
わけです。)
旧いGURPS第4版のFAQは上で書いたような発想で書かれています。(こ
れは、「戦闘技能はあまり「才能」の対象にするべきではないが、<戦闘技能
/スポーツ>なら「スポーツの才能」でボーナスを与えてもいいだろう。−3の
修正があるのであまり使えないだろうから。」という記述から読み取れます。)
この発想ならば、「才能」によるボーナスが他の技能の技能なし値(=ペナル
ティーをかけた元の技能)にも影響すると考えるのはごく自然なことです。新し
いGURPS第4版のFAQのように、「「才能」は特定の技能にだけボーナスを
与えるものだから、「才能」の対象外の技能に関しては何が何でもボーナス
は乗らない。」とする裁定は、果たして現実に即したものなのでしょうか?
この問題は、(GURPSの作成者たちでさえも)GURPSにおいての「哲学」
を十分に把握していないか、「哲学」が統一されきっていないために起こるも
のと考えられます。(PYRAMIDで紹介されているサンプルキャラクターの中
には、技能に対する「才能」やその他の特徴による修正を、@「対象能力値
の修正」のように記述しているものも存在します! )そのため、実際の裁定
をどうするかはセッションを行う仲間同士で決めなければならないのです。
以前の記事
に関連することですが、現在(2006年8月)の時点での旧い
GURPS第4版のFAQで、(基本的に)呪文に関してのみ知力を底上げする
「魔法の素質」が「要は、魔法に対する「才能」である」と書かれていたり、LIT
Eに「(「才能」の)ボーナスは対象となる技能に関してのみあなたの能力値を
上昇させる」と書かれていたりするのは、かつて「才能」のボーナスが@「対象
能力値の修正」だったことの名残でしょう。
それが変わったのは、能力値以外の数値を基準にして判定する際にも「才
能」によるボーナスを与えるためと考えられます。
(注:これは想像の域を出ません。)
最近、仲間内で(GURPSではない)「クラス制」のTRPGをやっていて気が
ついたのですが、「クラス制」のTRPGにおいて、PCの「有能さ」はどんなクラ
スを使えるか(知っているか)に大きく左右されます。(もちろん、PLの「賢さ」
やダイス運も大きく影響しますが。)これは当然と言えば当然のことなのです
が、ルールブック(サプリメント)を持っていない人はこの点で大きく出遅れて
しまいます。特に、マイナーなサプリメントの場合はルールやデータを知って
いる人が少ないので、その「格差」が大きな問題になります。
これは「クラス制」をとるTRPGの大きな欠点と言えるでしょう。(ただし、売
る側にしてみれば(そのTRPGに人気があれば)新しいサプリメントが確実に
売れるので利点になるのでしょうが。)
ここでGURPSについて考えてみます。GURPSは「クラス制」のTRPGでは
ありません。しかし、GURPS第3版では(新しい状況に「リアルに」対応できる
ようにするため)数多くのサプリメントが出版されました。これを何とかするた
めにCOMPENDIUM IとCOMPENDIUM IIが出たのですが、それでもサ
プリメントの所持/不所持による「格差」は完全には無くなりません。(特に、
呪文と「不利な特徴」の種類数はPC作成の際に大きく影響します。日本でG
RIMOIREやCOMPENDIUM I、COMPENDIUM IIを導入してGURPS
を遊ぼうとしたことのある人ならばよく分かる話でしょう。)
逆に、GURPS第4版ではベーシックやMAGICにほとんどのルールやデー
タが集まっており、新しいサプリメントにはほとんど追加のルールやデータが
ありません。(正直に言うと、私もPOWERSの追加データの少なさには拍子
抜けしました。)つまり、サプリメントによる「格差」があまり生じなくなっている
のです。
そう考えると、とにかく「リアリティ」を重視していたGURPS第3版から「ゲー
ム性」を重んじるようになったGURPS第4版への流れは(「クラス制」のTRP
Gへのアンチテーゼとして)必然的なものだったのかもしれません。
この前、ドラゴンマークの基本的な質問(「ディーヴァとは何か?」)に答える
際に気がついたのですが、グループSNEのサイトにはドラゴンマークを紹介
する記事が全くありません。まさかと思って探してみると、グループSNEのサ
イトにはユエル(ルナル)、百鬼夜翔(妖魔夜行)、パワーアップ以外のサプリ
メントの紹介記事が全く存在しないのです。(さらに、ユエル以外は紹介といっ
ても一言触れられているかいないかです。)このような状態を見ていると、グル
ープSNEには本当に「やる気」があるのか疑わしくなります。
TRPGは決してメジャーな趣味ではありません。さらに日本では、GURPS
はTRPGの中でも少数派に属するでしょう。つまり、ほとんどの人がGURPS
(TRPG)を知らないのです。そのような人がGURPS(TRPG)を始めるのに
は、興味を引くような「きっかけ」が必要になります。グループSNEにとって、
自分たちの翻訳(作品)の紹介記事を載せないというのは、そのような「きっか
け」をなくしてしまう自殺行為なのです。
(注:これらは全て、現在(2006年3月)の話です。)
この前、Role&Roll VOL.19(新紀元社)に掲載されているGURPS第4
版のシナリオ「ディノ!」を読んだのですが、その際に最後の恐竜のデータ(特
にプテラノドン)のサイズ修正(SM)が大きすぎると感じました。最初はグルー
プSNEが勝手にデータを作ったからだろうと思っていた(確証はありません。)
のですが、第4版FANTASYやDRAGONS(の、GURPS第4版へのコンバ
ート用データ)のデータと見比べると、サイズ修正は妥当な数値になっていまし
た。
私がそのように思った理由ですが、第4版BASIC SET CAMPAIGNSに
ある動物のサイズ修正のデータが、第4版FANTASYやDRAGONSのサイズ
修正のデータよりも概して小さくなっていることが原因でした。(例えば、第4版
BASIC SET CAMPAIGNSでは体長15フィート(≒5m)のニシキヘビがS
M0、鷹狩りに使うような鷹がSM−4、普通の猫がSM−3になっています。)
この違いは、サイズ修正の決定の際に「通常の大きさ」を考えるか「最大の
大きさ」を考えるかによって生じるものと考えられます。(前者が第4版BASIC
SET CAMPAIGNSの考え方、後者が第4版FANTASYやDRAGONSの
考え方になるわけです。)よく分からないならば、
GURPS シガン
の
有翼民
のような種族を考えてみてください。有翼民(身長は人間とほぼ同じで、翼長は
身長の3倍≒6m弱)のサイズ修正はどうなるでしょうか?
このことは、GURPS第4版に対して持っている「哲学」が人によって違うとい
うことを表しています。(それでも、GURPS第3版よりは遥かに「哲学」の統一
がなされていることは間違いありません。)そのため、GURPSを扱う際には背
後にある「哲学」に気をつける必要があるのです。
英語版と日本語版のそれぞれでGURPSの情報に触れていて気がついたの
ですが、GURPS第4版では技能の修正に@「対象能力値の修正」(「腕の敏
捷力」や「魔法の素質」など)とA「技能そのものへの修正」(ほとんどの特徴)、
B「判定への修正」(「超能力の才能」など)の3種類が存在し、それぞれをきち
んと区別しなければいけない、という事実はほとんど知られていないようです。
(さらにユエルの信仰による技能ボーナスの場合、C「実際にCPを払っている
技能に対して、もう1レベルだけ高いレベルになるように追加でCPを払ったも
のとして扱う」という解釈が成立しえます。)この区別は、以下のような状況で重
要になってきます。
「相対的技能レベル」(ベーシック【第4版】キャラクター、166ページを参
照してください。)を考える場合。この場合、@を修正から外して考えます。
<強行突入>や<空手>などのダメージボーナスを考える際には特に重要
でしょう。
「技能なし値をもつ技能の成長」(ベーシック【第4版】キャラクター、168
ページを参照してください。)を考える場合。この場合、AとBを修正から
外して考えます。「美声」のために<演劇>が上手にできるとしても、(GU
RPS第4版では)それで<演技>がうまくなる訳ではないのです!
あるレベル以上で技能を修得していること自体が重要になる場合。この
場合、Bを修正から外して考えます。<言いくるめ>や<外交>を20レベル
以上で取得した際に得られる、+2の反応修正などが重要でしょう。
「技能の維持」(ベーシック【第4版】キャラクター、283ページを参照して
ください。)で、技能レベルが能力値+11以上かどうかを考える場合。こ
の場合、@とBを修正から外して考えます。また、Cの場合は技能レベ
ルが1下がってもボーナスがなくなるだけであり、それは即座に元に戻る
ので技能レベルが下がる心配がなくなります。
さて、技能ボーナスを与える特徴で最もよくあるのは「才能」ですが、現在(2
006年2月)の時点では「才能」によるボーナスはAとなっています。(かつて
は@だったようです。(私もそう認識していました。)この名残は(日本語では)
ライト・カスタム(新紀元社 Role&Roll SP2)での「才能」の記述に見られ
ます。)
ここで、「カリスマ」や「美声」を考えると、ほとんどの場合で反応修正がかか
る上に多くの技能に同じ型の(Aの)ボーナスがつきます。そのため、バランス
を取るためには「才能」の反応修正や学習時間短縮の効果をどんどん適用す
るようにしなければならないのです。(残念ながら、これらの効果は往々にして
忘れられることが多いようですが…)
この前Role&Roll VOL.15(新紀元社)を読んでいて見つけたのですが、
その中の「メイル・フォー・ジャナストラ」のコーナー(ユエルのリプレイの最後に
あります。)には、非常に重大なデータの変更(エラッタ)がさりげなく書かれて
います。
(本来の意味の)確信犯でその要点を紹介すると、アルリアナ・リングの価格
が300G、重量が500g×2に、シャドウ・ピックとタマット・ツールの必要体力
がそれぞれ「なし」から「5」に変更されているのです。(ちなみに、GURPS第4
版で必要体力が「なし」というのは、最大致傷の制限がないということを表しま
す。)
しかも、コーナーの中では「そのうちにエラッタを載せる」という旨の発言があ
ったのですが、現在(2005年11月12日)もまだ、グループSNEのサイトのG
URPSのエラッタにはその変更が載っていません。(ちなみに、Role&Roll
VOL.15(新紀元社)が発売されたのは2005年10月18日頃です。)これは
非常に問題があります。
商売とする以上、ゲームの製作者は自分の制作したゲームに責任を負わね
ばなりません。そのため、自分の作品に不備が見つかった場合はそれを修正
し、(ゲームをする)全ての人に周知させる義務があります。基本的に紙媒体し
か普及していない時代ならともかく、WEBが普及している今は紙媒体と同時に
(ないしそれ以前に)WEBにも情報の訂正を載せるべきなのです。
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