ここでは、GURPS シガンを楽しむために必要なシガン世界についての知識を、
(とりあえずの)ゲームの中心舞台となる
ラント大陸
を中心に解説していきます。
シガン世界の概要
シガンは、(われわれの)太陽と同程度の大きさ、年齢の恒星(これを大太陽と呼
(注:厳密に物理的な計算をしてみると、シガン星は生命が棲める星なのか、シガ
なお、シガン世界のイメージイラストは
こちら
にあります。(このイラストは、おさか
ラント大陸の概要
(
ガッカイ
の子午線で)西経35度から東経3度、南緯11度〜28度の海に、(われ
個々の国の解説
ナバン連邦
ラント大陸
の南部に位置する国家です。その名のとおり、数多くの領主が治める数
ナバン連邦の街
イグルス
人口:約700万人
主要産業:魔化(紙幣発行)
ナバン連邦
の首都であり、ナバン王家の直轄領であり、
ラント大陸
で最大の都市
このフェフ紙幣はナバン王家直轄の魔化工場以外では(必要とされる宝石の価格も
ウェトウィ
人口:約54万人
主要産業:貿易、為替、株式
アルティメット民国と国境を接するところにある街で、ナバン連邦で2番目に多い人
クロノ
人口:約3万人
主要産業:鉱業(銅山)
こちら
に街のイラストがあります。
イグルス
の北西75カイリほどのところにある町です。基本的には典型的な「貴族」
アルティメット民国
ラント大陸
の中央にそびえる山岳地帯(「アルティ」と呼ばれています。)を領土とす
ガッカイ
ラント大陸
の東部を領土とする国家です。
ラント大陸
の中でも最高水準の文明
ナーモナ連合王国
ラント大陸
の西部に位置する国家です。その名のとおり、数多くの国王が治める数
びます。)から、(われわれの世界の単位で)1AU(天文単位)離れたところを(わ
れわれの)地球と瓜二つの惑星ヒガンが、3AU離れたところを大太陽の質量の約
8%の質量を持つ恒星(これを小太陽と呼びます。)が公転している連星系の中で、
小太陽から約2/3AU離れたところを公転している惑星です。
シガン星の質量はヒガン星(地球)の質量の約1.03倍で、ヒガン星とシガン星は
それぞれ地球の月とほぼ同じ質量の月を1つづつもっています。
シガン連星系の星は基本的に同一平面上にあるため、食がよく起こるのですが、
ヒガン星以外の星の自転軸は公転面に垂直になっています。(ヒガン星の自転軸
は、公転面と約66.6度の角度をなしています。)そのため、シガン星では北半球
が夏ならば南半球も夏になります。
シガン星にも四季はあります。大太陽との距離が変わることで、シガン星に降り注
ぐエネルギー量に変化が生じるからです。
この設定上、シガン世界の暦(時間)は以下のようになります。
点を取り付けて作った単振り子を、10m/s2の重力加速度の真空中にお
いて振った、その周期(≡1秒(s))の3600倍の時間
(1日はシガン星で小太陽が南中する時間を基準に、昼(午後)9時間、夜9
時間、朝9時間と分けられ、朝の始まりが1日の始まりとなります。)
(節気には、春から、立春、雨水、啓蟄、春分、清明、穀雨、立夏、小満、芒
種、夏至、小暑、大暑、立秋、処暑、白露、秋分、寒露、霜降、立冬、小雪、
大雪、冬至、小寒、大寒と、それぞれに名前がついています。)
(1小年はシガン星の小太陽に対する公転周期、1大年は小太陽の大太陽
に対する公転周期です。)
ン世界の暦は本当に正しいのかは怪しいのですが、魔法の存在するファンタジー
世界ということで、大目に見てください。)
なさんからの貰い物です。)
われの地球でいうと)カメルーンを海に浮かべて大きくした陸地が左に90度回転し
て浮かんでいる、それがラント大陸です。(南北の基準は、極から見たシガン星の自
転、公転の向きが、(われわれの)地球のそれと一致するように定めてあります。)
なお、ラント大陸の面積は地球のオーストラリア大陸の約3分の2、約170万平方
カイリほどです。
ラント大陸の北部は未踏の熱帯雨林になっていますが、大陸のその他の地域は、
人間やその他の知的種族が4つの国家(
ナーモナ連合王国
、
アルティメット民国
、
ガッカイ
、
ナバン連邦
)に分かれながらも入り混じって生活していることが知られて
います。
ラント大陸は、一般的に貿易風の影響を受けているため、北西にいくほど乾燥した
気候になっていますが、砂漠のように極端に乾燥した地域は存在しません。また、
季節風との兼ね合いで、ラント大陸には全域に(それぞれの形の)季節が存在しま
すが、基本的には一年中暖かく、
アルティメット民国
(アルティ)のような高山地帯
でもないと雪が降ることはまず考えられません。
ラント大陸の一般的なTLは5(6)(
ガッカイ
はTL6、
ナーモナ連合王国
のほとんど
の地域ではTL3(6))です。
ラント大陸に住んでいる人間(等)は、(われわれの世界の言葉を使うと)ポリネシア
人種型で背が高い(6’〜7’)ロル族、アボリジニ人種型で背が低い(4’前後)ワフ族、
モンゴロイド系の(身長5’〜6’)ニー族とリョ族という民族に別れており、リョ族以外
は定住生活を、リョ族は遊牧生活を送っています。これらの民族間には、差別意識
はまったくなく、混血の人も結構います。
彼らの思想は、1840年頃の日本人とほとんど変わりありません。基本的には善人
で、倫理的にはかなり厳格です。ただし、以下にあげるいくつかの点においては、決
定的な違いがあります。
万海里」の小説を参考にしてください。)
ています。ただし、「愛人」は本人と同じ種族の異性一人だけでなければいけま
せん。これは、異種族との間に子どもを作ることが倫理的に禁忌とされている
(が、恋愛や結婚そのものは特に制限されていない)ためで、「愛人」との間に
できた子どもは女性の側の家族の子どもとして扱われます。なお、「愛人」との
関係は基本的に「子どものため」だけのものであると認識されています。
多くの領域を国王がまとめるという政治形態をとっています。それぞれの領域は非
常に独自性が強く、共通しているのは一年中暖かく雨が多い(日本の沖縄あたりを
想像してください。)気候くらいです。
それぞれの領主(「貴族」(ノーブル)と呼ばれます。)は、世襲ではなく、社会的に大
きな貢献をし、国王に忠誠を誓っている人の中から国王により選ばれます。(つまり
PCも、条件がそろえば「貴族」になれるのです。)「貴族」であることは100CPの社
会的特徴です。この中には、「大富豪レベル2」とそれに伴う「軍人階級レベル3」と
「地位レベル4」、そして「義務感/ナバン国王」が含まれています。ただし、自分の
治める領域の土地と建造物の価格の合計を「所持品」として数えなければなりませ
ん。月々の税収は(基本的に)その5%にあたる額になり、領域の支出は全てその
税収(および「貴族」自身の蓄え)でまかなうことになります。「貴族」が副業を持つこ
とは自由ですが、1月に最低でも10時間は、領主自身が行わなければならない事
務手続きに時間を費やす必要があります。
ナバン連邦の全体像についてはこれ以上具体的な設定を行うつもりはありません。
つまり、あなた(GM)の好きなように領域を設定することができるのです。
です。領域全体が巨大な港湾都市となっているためリョ族や
コボルト族
は少ないの
ですが、その他の種族や民族は、主要種族(民族)は何である、ということができな
いほどに入り混じっています。特に
ラミア族
は、約21万人(総人口の約3%)と、他
の都市ではありえないほどの密度で暮らしています。(
ラミア族
は、
ラント大陸
では
圧倒的に少数派の種族です。)
イグルスで用いられる貨幣は、ボロ(純アルミニウム貨)およびフェフ(銀貨および紙
幣)で、3000ボロ=1フェフ(=(GURPSの)$1、われわれの世界でいうならば3
000円)です。ボロ貨もフェフ貨も、その額面と質量が比例関係にあるので、実質的
に秤量貨幣となっています。(ボロ貨は3000ボロで1アスク、フェフ貨は50フェフで
1アスクです。)また、フェフ紙幣は《スペルストーン》が魔化された魔法の紙幣で、破
り捨てると破った人に対して以下の治癒呪文がかかります。(パワーレベルは21で、
エネルギーは破られた紙幣から供給されます。)
考えると)採算が取れるように魔化することができないので、偽造紙幣はほとんど出
回っていません。(フェフ紙幣はマジックアイテムなので、魔力が込められていない偽
造は基本的に無意味です。)これらの特性から、イグルスの貨幣はイグルス以外の
地域でも使われることがあります。
イグルスの中には、確認されているだけでも140箇所以上「濃密で、魔化系を含む
複数の系統の呪文と相性が良い」マナのある場所が存在するため、魔化が非常に
盛んです。(
新しい魔法の応用その2
を用いた魔化が大規模に行われているので、
魔法の品物の価格は、魔化のエネルギーの8割(端数切り捨て)をA、Aの100分の
1(端数切り上げ)をBとして、3750×B+40×(A−95)(最低3752)ボロとなりま
す。(さすがにAが800を超えるような魔化ともなるとほとんど行われていません。))
しかし、イグルスはエネルギー不足に悩まされることはありません。ナバン王家直轄
の火力発電所(群)が大量の電力を供給しているからです。この火力発電所は煤煙
など、大気を汚染するようなものをほとんど出しません。(燃料にごみや下水を魔法
(《水を燃料/TL6》)で処理したものを用いているためですが、この事実は公表され
ていません。)高温でものを燃焼させると窒素酸化物が発生しますが、それも排出さ
れずに塩になり、窒素肥料として輸出されます。しかし、排熱だけはどうしようもあり
ません。そのため、イグルスは周辺地域に比べて明らかに気温が高く、一部の人々
からはこれを問題視する声も聞かれます。
口を抱える領域です。この領域の主要民族はリョ族、主要種族は
有翼民
で、各地
への旅の中継地点として発達してきたという歴史があります。
ウェトウィは非常に交通の便がよく、情報がよく集まるため、昔から貿易が盛んに行
われてきました。そのため、ウェトウィでは
ラント大陸
で通用している全種類の貨幣
が使えます。ただ、最近では為替や証券の取引のほうが大きな産業になっているの
で、基本的には
ガッカイ
で用いられているタンイ(とピト、タン)が通貨として用いられ
ることが多くなっています。
しかし、
ラント大陸
での証券取引がほぼ全てウェトウィで行われているという事態に、
万一のこと(現在の状態でウェトウィが災害や戦争に巻き込まれると、
ラント大陸
全
体の経済がほぼ間違いなく大混乱を起こします。)を考えて眉をひそめる人もいます。
の領域(貨幣は、
イグルス
の
フェフとボロ
を通用させています。)と変わるところ
はありませんが、以下に述べるような変わった点を持っています。
クロノでまず目に付くのは長さ600へクスの漆黒の斜塔です。この斜塔は、ジオイ
ド面と(有効数字3桁で)正確に30.0度の角度をなして真南を向いています。(そ
のため、塔の高さは300へクスということになります。)塔の頂上はほぼ水平にな
っており、周りの台地(クロノはポリエの底にあります。)とほぼ同じ高さであること
から、元は地下の施設だったものが周囲の侵食とともに地上に現れたものと考え
られていますが、確認できる範囲に出入り口が一切存在しないので、真相は不明
です。ただし、塔の周囲に250大年以上前(《古代史》でも調べきれません。)の遺
跡(斜塔を巨大日時計として利用するための巨石群)が存在するので、斜塔はそ
れ以前から存在する遺跡であることは間違いありません。(現在では、塔の頂上に
は《神託/風占い》(マナの相性と地上からの高さで実に技能レベルに+11の修
正があります!)用の神託所が建設され、ふもとから道がつけられています。)
クロノはポリエの底(一般的には、養分が集まり、水捌けが良いので農業に適して
います。)にあるにもかかわらず、周辺地域での農業はほとんど行われていませ
ん。これは先代の「貴族」が(発明されたばかりの)化学肥料を周辺の農地に大量
に使用した結果、土壌が荒れたことが原因です。(町の近くにある池は、化学肥料
の影響で今も深刻な富栄養化の問題を抱えています。)そのため、クロノには町の
地下100ヘクス以深の深さにある銅山以外に産業はありません(神託所関係の雇
用だけでは3万人の人口はとても支えられません。)が、この銅山は熱水鉱床なの
で資源量が少なく、資源の枯渇に伴う町の衰退が心配されています。
る国家です。つい最近(9小年前)までは「アルティメット朝」と呼ばれていました。革
命が起こったわけではありません。国の指導者が自ら改革を起こしたのです。
そもそも、アルティに住む人々はアルティにいる
アルジ
を尊敬し(アルジストが多い
というわけではありません。むしろ多いのは
ティウ
信者です。)、その管理をする人
を王として自発的に従ってきました。そこからアルティメット朝が生まれたのですが、
その王位は世襲ではなく、きちんと
アルジ
を管理できる人へと代々禅譲されてきま
した。ただし、
アルジ
の管理を怠ったり、圧政を敷くような場合は、武力で革命を起
こし、政権と王位(
アルジ
の管理者の座)を奪還することが当然のように行われて
きました。
現在では、王は自らの持つ(政治の)三権力のうち、(一部の)司法権のみを残して
他は他者に委ねています。(そのため、現在「王」は「(最高裁判所)裁判長」と呼ば
れています。)ここで、立法権は議会(国内の256の地域から1人づつ代表が地域
の住民の投票により選ばれ、全会一致(最初は多数決で決めると裁判長が定めた
のですが、多数決で変更されました。)で採決が行われます。)に、行政権は内閣
(議会が適任者を指名します。)にあります。裁判長は当初(われわれの世界で言う
ところの)社会主義的な政策を(暫定的に)打ち出していたのですが、これからどうい
う政治体制になっていくかは全く予測できません。
(TL6、ただし<鍛冶屋>などのシガン世界で特に発達している技能は他の国々と
同じ。)と完全な間接民主主義政治(政治の三権力が名実ともに完全に分離して
いるのはガッカイだけです。)を誇っています。(そのため、ガッカイ出身のキャラ
クターは必ず「高テクノロジーレベル1」の特徴を持たなければなりません。)
ただし、ガッカイは(標高が高いというわけではないのですが)山がちで平らな地
形が少ないので、自転車や自動車、飛行機といった乗り物はほとんど普及してい
ません。(自転車は疲れますし、エンジンはエンストが多くなります。飛行機の場合
は、離着陸に必要な滑走路が簡単には確保できません。)それでも、それらの乗
り物は
ラント大陸
の他の地域と同じくらいには普及しています。
ガッカイは移民の国です。もともとガッカイには魔術師や錬金術師が多くいたの
で、その技術(呪文)を学ぼうと昔から多くの人々が留学していました。(そのよう
な人々の交流の中から新しい技術が生まれてきたのです。)その伝統から、ガッ
カイは基本的に移民を制限しません。特に最近では、交通の発達に伴い移民の
数が激増しており、国全体で現在約900万人の人口が4大年で2000万人に達
するとも予測されています。このことを問題視する声はまだ聞かれませんが、人
口の激増にガッカイが悩まされるようになるのも時間の問題でしょう。
多くの王国が連合しているという政治形態をとっています。
ナーモナ連合王国にあるほとんどの王国では、主要種族は人間でアルジストの割
合が非常に多くなっています。また、進歩することに対してあまり価値を見出してい
ません。(そうでなければ、すぐにナーモナ連合王国の文明も
ラント大陸
の他の国
々のように発達するでしょう。)他の国々は、そのようなナーモナ連合王国の主義主
張に配慮し、向こうから事を起こさない限りナーモナ連合王国(全体)に関わること
はありません。
ナーモナ連合王国で特筆すべきは、西に長く突き出た半島(ゴン半島)です。ゴン半
島は東には山地となって続き、アルティにまで続いています。この山地の尾根沿い
には人工的に作られた運河の遺跡(現在でも普通の川として機能しています。)があ
り、そこから引かれた水で人々は農業を営んでいます。(ナーモナ連合王国の気候
はステップのそれに近く、あまり雨が降らないので、アルティから水を引くこの運河が
ないと農業は難しくなります。)また、ゴン半島は南からの寒流と北からの暖流を隔
てるように存在するので、絶好の漁場ともなっています。
ナーモナ連合王国の全体像についてはこれ以上具体的な設定を行うつもりはありま
せん。つまり、あなた(GM)の好きなように王国を設定することができるのです。シガ
ン世界で中世/ファンタジー的な世界を楽しみたい場合は、ナーモナ連合王国を舞
台にすればよいでしょう。