サイズ修正と体力との関係


最新更新日:2012年2月5日(日)

 体が大きいキャラクターは力が強い。これは大抵の世界で成立します。GUR
PS第4版では、基本値が体力であるヒットポイントは“質量や構造の頑丈さ”を
表すものとされているので、体力以上に体の大きさに依存します。
 しかし、GURPS第4版(の少なくともベーシック)には、サイズ修正と体力(ま
たはヒットポイント)との相関関係に対する基準が明示されていません。GURP
Sは「汎用」を謳うTRPGなので仕方のないことではあるのですが、それでもや
はり基準が全くないのは不便です。
 以下では、サイズ修正と体力(またはヒットポイント)との相関関係についてど
のような考え方が成立するか、そして、それらの考え方に従うとどのような相関
関係が導かれるのかについて解説していきます。


何が問題なのか

着眼点の紹介

各着眼点に基づく試算

さらに深く考えなければならないこと


何が問題なのか

 GURPS第4版(の少なくともベーシック)にサイズ修正と体力(またはヒットポ
イント)との相関関係に対する基準が記載されていないのは、体が大きいキャ
ラクターをどのように扱うのかについて、統一された見解を出せないことが理由
として考えられます。筋力は基本的に筋断面積に比例するので、体のプロポー
ションを変えずに長さを2倍にすると筋断面積と筋力とが4倍になり、(GURPS
第4版では体力の2乗に比例して荷重基本値が決まるので)体力は2倍になり
ます。一方、装備のプロポーションを変えずに長さを2倍にすると質量は8倍に
なるので、体力が2倍(荷重基本値が4倍)になっただけでは、「装備が実質的
に負担を及ぼす割合」が2倍になってしまいます。
 この考え方は「リアル」ではある(蟻が自分の体重に比して非常に重いものを
楽々と運べるのは、まさにこの理由によります。)のですが、それでゲームが面
白くなるかどうかはまた別の話です。そのため、どのような「ゲームバランス」に
するかによって、サイズ修正と体力(またはヒットポイント)との相関関係に対す
る基準を変更する必要が生じるのです。


着眼点の紹介

 先に述べたように、サイズ修正と体力(またはヒットポイント)との相関関係に
対する基準は世界観により異なる「ゲームバランス」に依存します。それでは、
どのような視点でこの問題を考えればよいのでしょうか? 幾つか例を挙げま
す。
 なお、以下では、サイズ修正が示す長さ(単位m)をSと表記します。また、S
の値は(特別な理由がない限り)ベーシック【第4版】キャラクター、21ページに
記載された「サイズ修正表」から引用します。

  1. 筋断面積基準
     これは、体力が筋断面積から得られる筋力から導かれるという考え方
    で、UPDATEや第4版FANTASY等で同値の考え方がなされています。
    この考え方によれば、筋力は基本的に筋断面積に比例するので、体の
    プロポーションを変えずに長さを2倍にすると筋断面積と筋力とが4倍に
    なり、体力は2倍になります。この関係を、人型の(体形によりサイズ修
    正が増えることがない)種族に当てはめた場合の体力の計算式は以下
    の通りとなります。

    (体力)=S×5

     この考え方は、計算が簡単で比較的「リアルなゲームバランス」を再現
    するのに適していますが、体が大きくなればなるほど装備や体の重さに
    よる制約が厳しくなります。

  2. 荷重基準
     これは、装備や体の重さによる体力への負担が体の大きさによって変
    わらないように体力を設定するという考え方です。この考え方によれば、
    身長2mの人間が長さ60cmの人間用のショートソードを扱うのと全く同
    様に、身長20mの巨人は長さ6mの巨人用のショートソードを扱うことが
    できます。この関係を、人型の(体形によりサイズ修正が増えることがな
    い)種族に当てはめた場合の体力の計算式は以下の通りとなります。

    (体力)=S×5× S/2(_____)

     この考え方は、実際の運用時に細かいことを考える必要がないという
    利点を持っていますが、小さなキャラクターが極端に不利になる、大きな
    キャラクターの必要CPが多くなるという問題点も持っています。

  3. 回復効率基準
     これは、一定のエネルギー量によるダメージの回復量は、体の大きさ
    によっては変化しないという前提のもとにヒットポイント(および体力)を設
    定するという考え方です。この考え方では、「高いHPと回復」(ベーシック
    【第4版】キャンペーン、82ページを参照してください。)によるヒットポイ
    ントの回復量の増加と、サイズ修正の増加による通常呪文のエネルギ
    ー消費の増加(ベーシック【第4版】キャラクター、231ページを参照して
    ください。)とが相殺するものと仮定して、ヒットポイント(および体力)とサ
    イズ修正との関係を計算します。すなわち、体力の計算式は以下の通り
    となります。

    (体力)=((サイズ修正)+1)×10
    (サイズ修正が0以上の場合。サイズ修正が0未満の場合は計算不可)

     この考え方は、問題を簡略化させるとともにルール運用に一貫性を持
    たせることができるという利点を有していますが、サイズ修正が0未満の
    キャラクターの体力を推定できない、キャラクターのサイズ修正が極端
    に大きい場合、その体力が低く見積もられるという問題点も持っていま
    す。

  4. 《拡大》《縮小》基準
     これは、サイズ修正と体力との関係の目安を、標準的な体格の人間
    に《拡大》または《縮小》の呪文をかけた場合のサイズ修正と体力との
    関係から導こうとする考え方です。標準的な体格の人間はサイズ修正
    0で体力10なので、体力の計算式は以下の通りとなります。

    (体力)=10×1.5(サイズ修正)

     この考え方は、発想が単純で理解しやすく、計算も比較的簡単である
    という利点を有していますが、(ゲーム世界内での)根拠に乏しく、「非現
    実的」な体力の設定となるという問題点も持っています。


各着眼点に基づく試算

 さて、サイズ修正と体力(またはヒットポイント)との相関関係に対する基準に
ついて、幾つかの着眼点が紹介されたのですが、実際のサイズ修正と体力(ま
たはヒットポイント)との対応関係はどのようになるのでしょうか? 各着眼点の
相関関係を(サイズ修正が−7〜+10の範囲で)一覧にまとめました。
 なお、以下の一覧においては、基本的に体力の計算値を10に近付ける方
向に丸めていますが、体力が2以下となる場合は体力の値を四捨五入してい
ます。また、体力の値が1未満となる場合は「φ」を、体力の値が計算できない
場合は「―」を、それぞれ体力の欄に記載しています。また、体力に併記され
たCPは、サイズ修正以外に修正がかからないと仮定した場合の、体力の必
要CPです。

サイズ修正(SM)と体力(ST)との関係
SM筋断面積基準荷重基準回復効率基準《拡大》《縮小》基準
-7φφφ
-6ST 1/-90 CPφφ
-5ST 2/-80 CPφST 1/-90 CP
-4ST 3/-70 CPST 1/-90 CPST 2/-80 CP
-3ST 4/-60 CPST 3/-70 CPST 3/-70 CP
-2ST 5/-50 CPST 4/-60 CPST 5/-50 CP
-1ST 8/-20 CPST 7/-30 CPST 7/-30 CP
0ST 10/0 CPST 10/0 CPST 10/0 CPST 10/0 CP
+1ST 15/45 CPST 18/72 CPST 20/90 CPST 15/45 CP
+2ST 25/120 CPST 39/232 CPST 30/160 CPST 22/96 CP
+3ST 35/175 CPST 65/385 CPST 40/210 CPST 33/161 CP
+4ST 50/240 CPST 111/606 CPST 50/240 CPST 50/240 CP
+5ST 75/325 CPST 205/975 CPST 60/250 CPST 75/325 CP
+6ST 100/360 CPST 316/1224 CPST 70/240 CPST 113/412 CP
+7ST 150/420 CPST 580/1710 CPST 80/210 CPST 170/480 CP
+8ST 250/480 CPST 1250/2480 CPST 90/160 CPST 256/492 CP
+9ST 350/680 CPST 2070/4120 CPST 100/180 CPST 384/748 CP
+10ST 500/980 CPST 3535/7050 CPST 110/200 CPST 576/1132 CP


さらに深く考えなければならないこと

  1. 異なる着眼点
     ここまで、サイズ修正と体力との関係を4つの着眼点から考えてきまし
    た。しかし、サイズ修正と体力との関係に対する着眼点は上述した4つ
    に限定されません。例えば、「キャラクターは体が大きくなるにつれてよ
    り強くなるはずなので、キャラクターの必要CPはサイズ修正が大きいほ
    ど多くなるべきである」という着眼点に基づいてサイズ修正と体力との関
    係を考えることもできます。(この着眼点は、体力にサイズ修正以外の
    修正がかかる可能性があるため、一般的な定式化ができません。)更
    に別の着眼点があるかもしれません。

  2. 体形
     上述した「筋断面積基準」「荷重基準」の各着眼点では、体力の計算
    式を考える際に、人型の(体形によるサイズ修正の増加がない)種族で
    あることを前提としています。これは体力10の人間を基準に考えている
    ためなので、体形によってサイズ修正が増えている種族に対して体力の
    計算式を考える際には、基準を設定し直す必要があります。なお、上述
    した「回復効率基準」「《拡大》《縮小》基準」の各着眼点では、サイズ修
    正の数値そのものを元に計算を行うので、基準を設定し直す必要はあ
    りません。

  3. サイズ修正のあいまいさ
     実は、GURPS第4版において、サイズ修正が示す長さは統一されて
    いません。例えば、ベーシック【第4版】キャラクター、21ページの「サイ
    ズ修正表」とベーシック【第4版】キャンペーン、203ページの「サイズ・
    速度/距離表」とを見比べると、サイズ修正が−3以下においてサイズ
    修正と長さとの対応関係が異なっています。(これは原文から異なって
    おり、さらに日本語訳で違いがひどくなっています。)体の大きさとサイ
    ズ修正との関係を考える際には、このことを頭の隅に入れておくべきで
    しょう。


戻る