GURPS第3版では、<言語>にも(他の言語からの)技能なし値があり、「技
能なし値を持つ技能の成長」のルールが適用される場合があります。(ベーシ
ック【完訳版】の、67ページと77ページを参照してください。)
このルールにはそれなりの存在理由(整合性)があったのですが、「言語」を
特徴として扱うGURPS第4版(日本語版)でそのルールが完全に消滅したた
め、問題が発生しうるようになりました。以下では、その問題に対処するため
の追加(ハウス)ルールを解説していきます。
(注意:以下のルールは、基本的にELIZAが考えただけのハウスルールであ
り、決して公式なルールではありません。公式なルールとしては、Steve Jacks
on Games のFAQに
こちら
のような指針が書かれています。)
「言語」を特徴として扱う際の問題は、特徴には明確な閾値があること、つま
り「あるかないか」しか存在しえないことです。現実世界では、(スペイン語とポ
ルトガル語のような)よく似た言語の片方に習熟していればもう一方の言語の
意味も(ある程度は)理解できる、ということは十分に考えられます。また、混
成語(ないし母語化した混成語であるクレオール言語)は元の言語とは別の言
語ですが、元の言語の使い手がその混成語を(全く)理解できないのは明らか
に不自然です。
GURPS第4版では、そのような状態を再現するためには問題となる「言語」
を全て習得している必要がありますが、それには多くのCPが必要になります。
「文化適応」でも似たような事態が発生しえますが、「文化適応」の場合は文
化の区切りを非常に大きなもの(例えば「文化適応/ヨーロッパの文化」)にす
れば(大抵の場合)問題は解決します。(ベーシック【第4版】キャラクター、24
ページを参照してください。)しかしながら、「言語」の場合は(現実に「世界共通
語」が存在しない以上)そのようなことはできません。そのため、「言語」には技
能なし値(と同様)の概念が必要になり、特徴として扱うには無理が生じるので
す。
先に述べたように、言語には技能なし値(と同様)の概念が必要となるのです
が、それではなぜGURPSが第4版になった際に「言語」が特徴となったのでし
ょうか?
これは、GURPS第3版において<言語>は精神技能であるため、知力の高い
キャラクターが多くの<言語>を0.5CPづつ払って(比較的)高いレベルで獲得
するような事態を避けたかったためと考えられます。技能には(基本的に)基準
となる能力値が存在するため、そのような問題が必然的に発生するのです。ま
た、技能は(基本的に)際限なくレベルを上げられるため、技能なし値で導かれ
る他の<言語>もレベルを高くできてしまいます。
では、言語をテクニックと考えればどうでしょう? テクニックには(基本的に)
レベルに上限があるため理不尽に高いレベルにすることはできません。ここで、
GURPS第4版ではテクニックの基準が自由なのを利用します。【言語】の基準
を(暫定的に)定数10にして難易度を並にすれば、既存のルールと消費するC
Pが同じになってバランスが取れるのです。
こうして、「言語」を以下のようなテクニックとして再定義することができます。
技能無し値:7ないし他の【言語】−(
修正
)。ただし、前者の場合技能な
し値での使用はできない。
前提条件:言葉が話せ、音が聞こえること
上限:10
あなたはある言語を話すことができます。会話能力の目安としては、8レ
ベルで「カタコト」、9レベルで「なまりがある」、10レベルで「母語レベル」
になりますが、(基本的に)7レベル以下では満足にその言葉を使うことが
できません。そのため、その言語を用いた技能の判定では、9レベルなら
−1、8レベルなら−3(芸術系の技能の場合はその2倍)の修正を受けま
す。
【言語(会話)】は言語ごとに別のテクニックとして扱いますが、(前提条件
を満たしていれば)母語の分の1言語についてはCPを払わずに10レベル
で獲得でき、その言語のレベルを下げればその分のCPを獲得できます。
修正:「言語の才能」があれば(8〜9レベルの言語に)+1。
技能無し値:7ないし他の【言語】−(
修正
)。ただし、前者の場合技能な
し値での使用はできない。
前提条件:ものが見え、手話に使う体の部分が動かせること
上限:10
あなたはある手話を理解することができます。能力の目安としては、8レ
ベルで「カタコト」、9レベルで「なまりがある」、10レベルで「母語レベル」
になりますが、(基本的に)7レベル以下では満足にその手話を使うことが
できません。そのため、その手話を用いた技能の判定では、9レベルなら
−1、8レベルなら−3(芸術系の技能の場合はその2倍)の修正を受けま
す。
【言語(手話)】は手話ごとに別のテクニックとして扱いますが、(言葉が話
せない人や耳が聞こえない人は)母語の分の1つの手話についてはCPを
払わずに10レベルで獲得でき、その手話のレベルを下げればその分の
CPを獲得できます。
修正:「言語の才能」があれば(8〜9レベルの手話に)+1。
技能無し値:7ないし他の【言語】−(
修正
)。ただし、前者の場合技能な
し値での使用はできない。
前提条件:文字が理解できること
上限:10
あなたはある言語の読み書きができます。能力の目安としては、8レベ
ルで「カタコト」、9レベルで「なまりがある」、10レベルで「母語レベル」に
なりますが、(基本的に)7レベル以下ではその言語の読み書きが満足に
できません。そのため、その言語を用いた技能の判定では、9レベルなら
−1、8レベルなら−3(芸術系の技能ならその2倍)の修正を受けます。
【言語(読み書き)】は言語ごとに別のテクニックとして扱いますが、(前
提条件を満たしていれば)母語の分の1言語についてはCPを払わずに
10レベルで獲得でき、その言語のレベルを下げればその分のCPを獲
得できます。
修正:「言語の才能」があれば(8〜9レベルの言語に)+1。
さて、言語間での技能なし値が定められるように言語をテクニックとして再定
義したのはよいのですが、実際に言語間の技能なし値にはどの程度の修正を
かければよいのでしょうか? これは(GMの)世界観によって変わってくるので
一概には言えませんが、考えられるパターンを3つほど例示しておきます。
なお、例として書かれている「アイン・アリスへの旅」はベーシック【完訳版】に
入っているシナリオで、<ランタラ語>が−3修正で<ノーミック語>に、−5修正で
<エイユンの交易混合語>になるという言語間の技能なし値の関係があります。
(ベーシック【完訳版】293ページのサイドバーを参照してください。)
この世界で知られている(主要)言語はどれも似たようなもので、「言葉
が通じない」という状況はまず発生しません。ルール的には、GURPS第
3版での言語間の技能なし値への修正を4分の1にして適用します。(「ア
イン・アリスへの旅」で言えば、【ランタラ語】は−1修正で【ノーミック語】、
−2修正で【エイユンの交易混合語】の技能なし値になります。)この設定
は、「共通語」が存在するファンタジー世界やローマ帝国が崩壊した直後
の中世ヨーロッパ、昔の中国(この場合は読み書きのみ)のような世界で
使うことができるでしょう。
この世界にはよく似た言語は存在するものの、言語同士の間にははっ
きりとした違いがあります。ルール的には、GURPS第3版での言語間の
技能なし値への修正を半分にして適用します。(「アイン・アリスへの旅」で
言えば、【ランタラ語】は−2修正で【ノーミック語】、−3修正で【エイユン
の交易混合語】の技能なし値になります。)この設定は、比較的「リアル」
な世界で、(PCが)活動する範囲が狭い場合(例えば、南フランス、スペ
イン東部、北イタリアだけを舞台としたキャンペーン)に使うことができるで
しょう。
この世界で知られている言語は非常に多岐にわたり、同じ言葉の別の
方言ですら理解できないことがあります。ルール的には、GURPS第3版
での言語間の技能なし値をそのまま適用します。(「アイン・アリスへの旅」
で言えば、【ランタラ語】は−3修正で【ノーミック語】、−5修正で【エイユン
の交易混合語】の技能なし値になります。)この設定は、言語同士の技能
なし値を考えたくない場合や(PCが)活動する範囲が非常に広い場合(例
えば、複数の惑星や次元を又にかけたキャンペーン)に使うことができる
でしょう。
(注意:ここで紹介した技能なし値の関係のうち、「言語間の相関」はSteve Jac
kson Games の
指針
と(実際の)ルール的な運用がほぼ同じになります。また、
英語版GURPS第4版用に調整し直された「アイン・アリスへの旅」(GURPSの
記事などをオンラインで「購入」できるe23から無料で「購入」することができま
す。)では、言語の技能なし値の関係として、ここで書いている「共通語」と同等
のルール運用がされています。)
上記のルールの導入により、言語をテクニックとして扱うことができるようにな
りました。では、これをもっと活用するにはどうしたらよいでしょうか?
GURPS第4版では、「言語」は最高でも「母語レベル」にしかならず、「言葉の
達人」のようなキャラクターは<記録>などの技能を高いレベルで獲得することで
再現することになっています。(ベーシック【第4版】キャラクター、25ページを参
照してください。)
しかし、それでは「言葉を適切に使い分けることができ、多少意思疎通に障害
がある場合でも適応できる」キャラクターを再現することはできません。また、言
語の天才の(「言語の才能」を持っている)キャラクターが、母語の使用において
は普通のキャラクターと全く変わりがない、と言うのも変な話です。また、現行の
ルールでは、「言語の才能」を持っているキャラクターが何のペナルティーも被る
ことなく「母語の教育をあまり受けていない」ことで2CPを獲得することができる
のです!
これらの問題は、言語を使った意思疎通そのものに長けた「言語の天才」の存
在を認めれば全て解決されます。ルール的には、【言語】の基準と上限を「言語
力」という副能力値として設定すればいいのです。その場合、「言語力」と【言語】
のルールは以下のように(再)設定されます。
言語力は言語を使った意思疎通の素養を表しています。「言語的なもの
により」意思疎通に障害が発生するような場合、GMは言語力を基本に「言
語力判定」を行い、相手の「言いたいこと」を汲み取ることができたかを判
定します。これは「カタコト」の理解度の言語などによる「言葉が理解できる
か」という問題とは全く別のものです。たとえ【手話】が「わからない」キャラ
クターでも、言語力判定に成功すれば「相手が手話で何かを伝えようとして
いる」ことに気づくことができるのです!
言語力は基本的に10で、10CPを支払うごとに1点づつ、1点づつ低下さ
せるごとに10CPを獲得できます。ただし、知力が6以上ある場合は言語力
は最低でも8にしなければならず、言語力を9以下にしたり12以上にしたり
するにはGMの許可が必要になります。また、知力が5以下の場合は原則
的に言語力は定義されません。(「−」となります。)そのため、言語力にCP
を費やすことも言語力からCPを得ることもできません。
(注意:言語力の副能力値を導入する場合、「言語の才能」があれば言語
力は11、なければ言語力は10とみなし、「言語の才能」の特徴は無視して
ください。)
技能無し値:言語力−3ないし他の【言語】−(
修正
)。ただし、前者の場
合技能なし値での使用はできない。
前提条件:言葉が話せ、音が聞こえること
上限:言語力
あなたはある言語を話すことができます。会話能力の目安としては、8レ
ベルで「カタコト」、9レベルで「なまりがある」、10レベル以上で「母語レベ
ル」になりますが、(基本的に)7レベル以下では満足にその言葉を使うこ
とができません。そのため、その言語を用いた技能の判定では、9レベル
なら−1、8レベルなら−3(芸術系の技能の場合はその2倍)の修正を受
けます。
【言語(会話)】は言語ごとに別のテクニックですが、(前提条件を満たし
ていれば)母語の分の1言語についてはCPを払わずに言語力レベルで
獲得でき、その言語のレベルを下げればその分のCPを獲得できます。
技能無し値:言語力−3ないし他の【言語】−(
修正
)。ただし、前者の場
合技能なし値での使用はできない。
前提条件:ものが見え、手話に使う体の部分が動かせること
上限:言語力
あなたはある手話を理解することができます。能力の目安としては、8レ
ベルで「カタコト」、9レベルで「なまりがある」、10レベル以上で「母語レベ
ル」になりますが、(基本的に)7レベル以下では満足にその手話を使うこ
とができません。そのため、その手話を用いた技能の判定では9レベル
なら−1、8レベルなら−3(芸術系の技能の場合はその2倍)の修正を受
けます。
【言語(手話)】は手話ごとに別のテクニックですが、(言葉が話せない人
や耳が聞こえない人は)母語の分の1つの手話についてはCPを払わずに
言語力レベルで獲得でき、その手話のレベルを下げればその分のCPを
獲得できます。
技能無し値:言語力−3ないし他の【言語】−(
修正
)。ただし、前者の場
合技能なし値での使用はできない。
前提条件:文字が理解できること
上限:言語力
あなたはある言語の読み書きができます。能力の目安としては、8レベ
ルで「カタコト」、9レベルで「なまりがある」、10レベル以上で「母語レベル」
になりますが、(基本的に)7レベル以下ではその言葉の読み書きが満足
にできません。そのため、その言語を用いた技能の判定では、9レベルな
ら−1、8レベルなら−3(芸術系の技能の場合その2倍)の修正を受けま
す。
【言語(読み書き)】は言語ごとに別のテクニックですが、(前提条件を満
たしていれば)母語の分の1言語についてはCPを払わずに言語力レベル
で獲得でき、その言語のレベルを下げればその分のCPを獲得できます。
上記のルールの導入により、言語力という副能力値を定義することができまし
た。
では、これを実際のゲームで活用するにはどうしたらよいでしょうか? 以下に
その活用例を並べます。