はじめに
魔法大全の21〜22ページには魔法の品物の価格を求める方法が書かれてい
ますが、それで実際に価格を求めようとすると間違いを犯すことになります。ここで
は、主に手軽で危ない魔化にある問題を幾つかの仮定を追加して解決していきま
す。
多様な技能レベルに対応した平均給料
魔法大全の21ページでは、魔化魔術師の給料を職人魔術師(《魔化》15レベル
と考えてよいでしょう。)で「標準」レベル、熟練魔術師(《魔化》20レベル)で「快適」
レベルと仮定しています。しかし実際には魔化魔術師の技能レベルは様々であり、
高い技能レベルを活かしている魔化魔術師ほど高い収入を得ているはずです。
この影響を考えるため、熟練魔術師の《魔化》が20レベルを超える2レベルごと
に熟練魔術師の給料Bの財産レベルは1段階上がるものとします。(「仕事につく」
(ベーシック【第4版】キャラクター、172ページ)のルールから、技能レベルが必要
条件を2レベル上回っていることによる+2の修正は、仕事の財産レベルが1段階
高いことによる−2の修正とちょうど相殺するからです。)
この仮定により、熟練魔術師の《魔化》の技能レベルA、儀礼魔法集団の人数C、
平均給料Dの関係を導くことができます。(以下の表を参照。)
A | B | C | D |
---|---|---|---|
15 | E | 1 | E |
16 | 1.2 × E | 2 | 1.10 × E |
17 | 1.4 × E | 3 | 1.13 × E |
18 | 1.6 × E | 4 | 1.15 × E |
19 | 1.8 × E | 5 | 1.16 × E |
20 | 2 × E | 6 | 1.16 × E |
21 | 3.5 × E | 7 | 1.21 × E |
22 | 5 × E | 8 | 1.50 × E |
23 | 12.5 × E | 9 | 2.27 × E |
24 | 20 × E | 10 | 2.90 × E |
25 | 60 × E | 11 | 6.36 × E |
26 | 100 × E | 12 | 9.25 × E |
27 | 550 × E | 13 | 43.2 × E |
28 | 1,000 × E | 14 | 72.3 × E |
29 | 5,500 × E | 15 | 367 × E |
30 | 10,000 × E | 16 | 625 × E |
31 | 55,000 × E | 17 | 3,230 × E |
32 | 100,000 × E | 18 | 5,550 × E |
33 | 550,000 × E | 19 | 28,900 × E |
34 | 1,000,000 × E | 20 | 50,000 × E |
注意事項
魔化のサイクル
魔法大全の22ページでは、魔化魔術師は平均で10点のFPを寄与し、(《エネル
ギー回復》を15レベルで習得しているとして)その回復に50分を費やすことになっ
ているため、1時間かかる手軽で危ない魔化では1サイクルは110分(8時間の労
働時間で約4.4サイクル)かかることになっています。しかし、この仮定には2つの
重要な要素、すなわち食事時間と状況により変わる休憩時間のことが考慮されて
いません。
普通の人間は1日のうち90分を食事に費やします。(ベーシック【第4版】キャラ
クター、137ページの「食事が遅い」の記述から推定できます。)ここで、食事中は
FPが余分に1点回復する(ベーシック【第4版】キャンペーン、85ページ)上にその
時間は労働時間に含まれません! (ベーシック【第4版】キャンペーンの巻末にあ
るスケジュール表の記述から推定できます。)そのため、儀礼魔法集団はスケジュ
ールをうまく組むことにより、1日36FP(《エネルギー回復》を15レベル以上で習得
している場合)ないし90FP(《エネルギー回復》を20レベル以上で習得している場
合…《魔化》が19レベル以上の熟練魔術師ならば普通にあるでしょう。)を「勝手に
回復する」FPとして使うことができるのです! この前提を置くと、(それぞれの魔
化魔術師が10FPを寄与するとして)1時間の魔化4回、合計1時間半の食事時間、
そして合計20分の休憩で1時間の魔化作業4サイクルになりますが、1日8時間働
くならば(残りは220分になるので)更に2サイクル分魔化を行うことができます。
状況により休憩時間が変わることを考えると、物事は少しややこしくなります。こ
こで、例として疲労点を合計で34点供給しなければならない手軽で危ない魔化を
考えます。(熟練魔術師は《魔化》19レベル、《エネルギー回復》20レベル、職人
魔術師3人は《魔化》15レベル、《エネルギー回復》15レベルであるとします。)こ
の場合、魔化魔術師は平均で1人8.5FPを寄与することになるので、50分(《エ
ネルギー回復》15レベルで10FP回復する時間)も休憩する必要はありません!
この場合、1回の魔化で職人魔術師3人が8点づつ、熟練魔術師が10点FPを寄
与するのが最も効率がよくなります。(魔法大全の前提条件に矛盾しないように、
1人の魔化魔術師は10FPまでしか寄与できないものとしています。)食事などの
影響を考えない休憩時間Gと魔化のサイクル数Hの関係は、以下の表を参照して
ください。
F | G | H |
---|---|---|
1 点 | 5 分 | 8 回 |
2 点 | 10 分 | 8 回 |
3 点 | 15 分 | 8 回 |
4 点 | 20 分 | 8 回 |
5 点 | 25 分 | 8 回 |
6 点 | 30 分 | 7 1/3 回 |
7 点 | 35 分 | 7 回 |
8 点 | 40 分 | 6.6 回 |
9 点 | 45 分 | 6 2/11 回 |
10 点 | 50 分 | 6 回 |
ここで、魔化魔術師は1日に36FP(ないし90FP)が「勝手に回復」し、8時間の
労働では魔化は8回までしかできないことに注意してください。また、実際には魔化
のサイクルは最も回復が遅い魔化魔術師に合わせることになるので、FPの総寄与
量IとHの関係は以下のようになります。
I(点) | A | C(人) | D | H(回) | 追記 |
---|---|---|---|---|---|
1-4 | 15 | 1 | E | 8 | |
5 | 15 | 1 | E | 8 | [1] |
6 | 15 | 1 | E | 7 1/3 | |
7 | 15 | 1 | E | 7 | [1] |
8 | 15 | 1 | E | 6.6 | |
9 | 15 | 1 | E | 6 2/11 | |
10 | 15 | 1 | E | 6 | |
11-12 | 16 | 2 | 1.10 × E | 7 1/3 | |
13-14 | 16 | 2 | 1.10 × E | 7 | [1] |
15-16 | 16 | 2 | 1.10 × E | 6.6 | |
17-18 | 16 | 2 | 1.10 × E | 6 2/11 | |
19-20 | 16 | 2 | 1.10 × E | 6 | |
21 | 17 | 3 | 1.13 × E | 7 | [1] |
22-24 | 17 | 3 | 1.13 × E | 6.6 | |
25-27 | 17 | 3 | 1.13 × E | 6 2/11 | |
28-30 | 17 | 3 | 1.13 × E | 6 | |
31-32 | 18 | 4 | 1.15 × E | 6.6 | |
33-34 | 19 | 4 | 1.20 × E | 6.6 | [2, 3] |
35-36 | 18 | 4 | 1.15 × E | 6 2/11 | |
37-40 | 18 | 4 | 1.15 × E | 6 | |
41-42 | 19 | 5 | 1.16 × E | 6.6 | [2] |
43-46 | 19 | 5 | 1.16 × E | 6 2/11 | [2] |
47-50 | 19 | 5 | 1.16 × E | 6 | [2] |
51-55 | 20 | 6 | 1.16 × E | 6 2/11 | [2] |
56-60 | 20 | 6 | 1.16 × E | 6 | [2] |
61-64 | 21 | 7 | 1.21 × E | 6 2/11 | [2] |
65-70 | 21 | 7 | 1.21 × E | 6 | [2] |
71-73 | 22 | 8 | 1.50 × E | 6 2/11 | [2] |
74-80 | 22 | 8 | 1.50 × E | 6 | [2] |
81-84 | 23 | 9 | 2.90 × E | 8 | [2, 4] |
85 | 23 | 9 | 2.90 × E | 8 | [1, 2, 4] |
86-90 | 23 | 9 | 2.98 × E | 8 | [2, 4] |
91-94 | 24 | 10 | 3.54 × E | 8 | [2, 4] |
95 | 24 | 10 | 3.54 × E | 8 | [1, 2, 4] |
96-100 | 24 | 10 | 3.62 × E | 8 | [2, 4] |
追記
[1]: 1日の終わりに疲れている魔化魔術師がいます。(労働時間内に回復しきれな
いFPが最大4点あります。)
[2]: 熟練魔術師の《エネルギー回復》は20レベル以上です。(特に記されていなけ
れば、全ての魔化魔術師の《エネルギー回復》は15〜19レベルです。)
[3]: 魔法の品物のパワーが16になるように魔化を行っています。(普通は魔法の
品物のパワーが15になるように魔化を行うのが最も費用が安くなりますが、これは
例外です。)
[4]: 何人かの職人魔術師は(《魔化》を19レベル、)《エネルギー回復》を20レベル
で修得しています。(普通は《魔化》15レベル、《エネルギー回復》15レベルの魔化
魔術師を職人魔術師として使うのが最も費用が安くなりますが、これは例外です。)
魔化にかかる時間Jが2時間以上の場合、問題は簡単になります。そのような魔
化は8時間の労働時間に4回までしか行うことができないので、魔化魔術師が寄与
するFPは「勝手に回復」するFPだけで十分になるからです。(2時間の魔化が4回
の場合は労働時間内に回復しきれないFPが4点あることがありますが、これは大
した疲労ではありません。)そのため、H = 8 / Jとなります。
魔化用の杖
魔法大全では、手軽で危ない魔化を行う際にもパワーストーンの利点を完全に無
視しています。しかし、実際には(特にJが長くマナが濃い場合)パワーストーンはわ
ずかながらもエネルギーを提供し続けることができます。
両端にパワーストーンを取り付けた長さ2mの木の棒を思い浮かべて下さい。この
棒に《魔法の杖》を魔化して「魔化用の杖」にすると、取り付けられたパワーストーン
は“内蔵型”となりエネルギーを2倍の効率で使えるようになりますが、魔化へのペ
ナルティは実質的にありません。さらに、杖に取り付けられた2個のパワーストーン
は2m離れているので、充電時間は全く変わりません!
この「魔化用の杖」は魔化をするときに非常に便利な道具であり、魔化魔術師が
(何本かを)所有して使っているのは非常に理にかなっています。この影響を考える
ときには、週単位でものを考えなければならないことに注意してください。―魔化魔
術師が週休2日(魔法大全の22ページにある、ゆっくり確実な魔化で設定された仮
定を踏まえています。)だとしても、パワーストーンは休むことなく充電を続けるので
す! そのため、「魔化用の杖」により寄与されるエネルギーKは、Lを(パワースト
ーンの充電速度(点/日))×(「魔化用の杖」の本数)とすれば、K = (7 / 5 × 2 ×
2 × L / H) = 5.6 × L / Hと計算できます。ここで端数を切り捨ててはいけません。
―魔化魔術師はパワーストーンからエネルギーを引き出すかどうかをその時々で決
められるからです。
「魔化用の杖」を考えるときには、パワーストーンがきちんと充電するように杖を置
く場所を考えないといけません。大きなクローゼット(142cm×142cm×284cm)
であっても、「魔化用の杖」は3本しかしまえないのです。しかし、魔化が行われてい
る所から10m以内には(技能にペナルティが入るため)魔化魔術師以外に誰もいて
はならないことを考えると、その「空きスペース」に「魔化用の杖」を数十本置くことも
可能でしょう。
魔化の費用
ここまで、魔化の労働費用に影響を与える要素を色々と考えてきました。しかし、
実際の価格はどのように計算するのでしょうか? 魔法大全の22ページには、魔
化の必要エネルギーNから魔化の労働費用Mを求める方法が解説されています。
この方法は一見ややこしいですが、式にすると意外と簡単です。以下を参照してく
ださい。
手軽で危ない魔化:
M = N × C × D / 22 / ((I + K) × H) / 0.9547
= N × (B + (C-1) × E) / (I × H × 21.0034 + L × 117.61904)
ゆっくり確実な魔化:
M = N × E / 22 / 0.9547
= N × E / 21.0034
ここで、C、H、I、Lは、マナの濃度、「魔化用の杖」の本数、B、E、N(これらは全て
与えられています。)から求められることに注意してください。
さらに深く考えなければならないこと
魔化魔術師以外の人からの助力があれば、魔化はより効率的に行われる
ようになります。
魔化魔術師以外の人が魔化魔術師に《エネルギー賦与》をかければ、魔化
魔術師は休む必要が無くなります。《知恵》や《祝福》は魔化に直接は影響を
及ぼしませんが、「視覚化暗示」や<魔法シンボル>にはボーナスが入るので、
間接的に魔化にボーナスを与えることができます。さらに、《エネルギー供与》
と《遠隔詠唱》を使えば、ペナルティなしで最大5点(通常は。「魔法の素質」の
レベルによってはそれ以上。)のエネルギーを追加で供給することができるの
です!
ここで、魔化魔術師以外の人は魔化が行われている間休むことができるの
で、魔化のサイクルには(普通は)影響しないことに気を付けてください。(《エ
ネルギー供与》と《遠隔詠唱》の場合でも、魔化のエネルギーが消費されるの
は儀礼が終わった時なので、それに合わせて呪文がかけられるはずです。)
また、魔化魔術師以外の人の給料も当然Mの計算に反映されなければなり
ません。
パワーストーンほど価格の計算が難しい魔法の品物はありません。原材料
の価格によりエネルギー消費が変わる上、何回も魔化を行わなければならな
いこと、歪みのあるパワーストーンが「安売り」されることを考えると、実質的な
魔化の成功率Oの計算が難しくなるためです。(
こちら
にOを計算するプログ
ラムがあります。)
しかしながら、《パワーストーン》は価値のある品物ならば何であれ通常のエ
ネルギーで魔化することができるため、パワーストーンの価格を簡単に求める
ことができる場合があります。$120 (= 10 × 22 + 40 × 2)の価値のある1点の
パワーストーンは、たとえその「原材料」の価値が$50 (= 10 × 12 + 40 × 1)に
満たないとしても通常通りのエネルギー消費で《パワーストーン》を魔化するこ
とができます。
問題を簡単にするため、《パワーストーン》を魔化する際は通常通りのエネル
ギー消費しかしないものとします。(エネルギー消費が4倍になるのは、ほとん
どの場合採算に合いません。)歪みが1つあるパワーストーンは1割引の価格
で売れるので、O = 0.9547 + 0.9 × 6 / 216 ≒ 0.98となります。(ここでは歪み
が複数あるパワーストーンが半額で売れることを考えていません。これを考え
ると大きなパワーストーンの場合にOが上昇します。)標準的な設定で《パワー
ストーン》を魔化する場合、2人の魔化魔術師が1月に22日働いて132(22
×6)回《パワーストーン》を魔化し、2.2 × Eだけの収入を得ます。そのため、
(10 × P2 + 40 × P) + E / 60 / O < 10 × P2 + 60 × P + 50(P点のパワー
ストーンの価格がP+1点のパワーストーンを通常のエネルギー消費で作るのに
必要な最低価格を上回るための条件。(P - 51)2 < 502 + 366 - 53 / 588 × E
と同値。)が成立するならば、$(10 × P2 + 60 × P + 50)(P+1点のパワースト
ーンを作るために必要な最低価格)の価値を持つP点のパワーストーンが存
在することになります。この場合、 P+1点のパワーストーンの価格はエネルギ
ー消費20の魔化を$(10 × P2 + 60 × P + 50)の品物に行ったときの価格と
して求めることができます。
《魔化》(と魔化される魔法)にボーナスが入る場合、考えることはあまりあ
りません。単純にCを大きくして計算し直せばよいのです。ただ、より能力の
低い魔術師も魔化魔術師として働けるようになるので、BとEはより小さくなる
かもしれません。
《魔化》(と魔化される魔法)にペナルティが入る場合、話はややこしくなり
ます。《魔化》(と魔化される魔法)の修正後技能レベルが15以上でないと、
魔化魔術師として働くことができなくなるからです。これを考えるには、適切
な(職人)魔術師の技能レベルを決定し、それに見合ったBやC、Eを求めな
ければなりません。
《エネルギー回復》にかかる修正も忘れてはいけません。ボーナス(ペナル
ティ)によっては職人魔術師のFPの回復が劇的に加速する(減速する)こと
になるからです。
この記事では、魔化魔術師の給料を職人魔術師(《魔化》15レベルと考え
てよいでしょう。)で「標準」レベル、熟練魔術師(《魔化》20レベル)で「快適」
レベルと仮定しています。しかし、その仮定が成り立たない世界ももちろん存
在しえます。その場合、適切な設定に基づいてBとEを決め直さなければなり
ません。